生きていくのが面倒な日々 - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

 年末年始は大晦日と元旦だけ休んで、正月二日からは仕事場に出た。
会社員だった頃なら、自らそんなことをしたいとは絶対に思わない。
 けれど、小説家という職業は「やりたくないけど生きていくお金を稼ぐためにしかたなくやる労働 [...]

本格B級多国籍美食地域 - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

 横浜の古い繁華街、関外地区には、1本の通りに1つの町名がついている。
 伊勢佐木町(いせざきちょう)もまた、1本の長い通りだ。1丁目は関内に近く、活気のある外来者向けの商業地区だが、3丁目、4丁目と関内から遠ざかるにし [...]

町は大人の学園祭 - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

 僕の仕事場の黄金町は、かつて問屋街だった。
 ところが太平洋戦争の後のごたごたで、いつの間にか麻薬と売春の町になってしまった。戦後、人々はそれぞれぎりぎりに生き延びる道を求めた。それらの人々の切実な事情が重なったとき、 [...]

逃走するアイドル - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

アイドルが失踪した。
 十六歳で歌手デビューして、三十枚以上のアルバムを発表し、十本ほどの映画に出演し、三十に近いコマーシャルに出て、いまは三十八歳。女優をしていた。
 夫が覚醒剤所持で逮捕された現場から立ち去ったまま、 [...]

沖縄で暑さを取材する - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

殺人的な太陽。
 沖縄を舞台にした小説を書くために、沖縄に一週間の予定で滞在した。
 一階は食堂、二階は美容室。そこまでは冷房が効いている。三階は安宿で一日千五百円、一週間なら八千円。もちろん相部屋で、エアコンは壊れてい [...]

ヨットでグルメをしない理由(わけ) - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

「え、ステラマリスで料理を作っていたんですか?」
 5年ほど前からのクルーが言った。ステラマリスというのは、僕が友人と共同で所有しているヨットの名前だ。
 「そうさ。このあたりじゃ、ステラマリスに乗れば美味しい料理が食べ [...]

僕は雨が好きだった - 連載エッセイ 窓を開ければ港も見える 阿川 大樹 -

 高層アパートの窓からは雨が見えない。
 さあ出かけよう。そのときに思う。傘がいるのだろうかと。
 灰色の空をバックに窓の前を通過していく小さな雨の粒は、あまりにも小さすぎて僕には見えない。
 窓ガラスに貼りつくようにし [...]

窓を開ければ港も見える

阿川 大樹
絶滅危惧種連載エッセイ
 めでたい。春からの小説の連載が決まって、久々にそこそこの定収入が見込めることになった。
 とはいえ、連載が不評で途中打ち切り、なんてことになる可能性だってあるわけだから、文筆業 [...]

未曾有の危機 - 窓を開ければ

 自動車が売れない。
 2008年11月、アメリカの自動車販売は前年同月比40%も減少した。ヨーロッパでも日本でも3割減だ。その上、1年間で20%の円高だ。ついこのあいだまで日本経済の優等生だった自動車産業も、あっという [...]

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