バンクーバーの違法薬物事情 実態調査の結果を発表
日本では有名芸能人の相次ぐ逮捕で違法薬物が大きくクローズアップされた2009年。連日のマスコミ報道は薬物に手に染めたことで支払わなければならない代償の大きさを世に知らしめるには一役買ったが、一方では意外な入手の容易さも暴かれるに至り、改めて「ドラッグは特殊なルートで特殊な人たちだけが手に入れるもの」という時代ではもはやないのだということが浮き彫りにされた。
カナダではブリティッシュ・コロンビア州を拠点とする健康リサーチグループ(The Urban Health Research Initiative at the BC Centre for Excellence in HIV/AIDS)が24日、過去10年にわたり、主にバンクーバーのダウンタウン、イーストサイドに住む違法薬物中毒者2000人以上を対象に行った実態調査の結果を発表した。バンクーバーは2003年、監視の下でドラッグの静脈注射が行える施設「インサイト」を開設し、1日に500件の静脈注射に対応していたというが、その前後、薬物事情に変化はあったのだろうか。
過去10年の動き
まず調査結果の最大のハイライトは、この10年で使用される薬物の種類に大きな変化が見られたこと。1996年には成人の静脈注射によるコカイン使用の割合がドラッグ全体の38.1%だったのに対し、2007年には8.5%にまで減少した。但し、コカインの減少に伴いクラック・コカインの喫煙が増大したという見過ごせない結果も得られている。数字で見ると、1996年には過去6ヵ月間で日常的にクラック・コカインを使用(静脈注射および喫煙)したと答えた中毒者は全体の3.5%に過ぎなかったが、2007年には同様の条件で41.7%にまで跳ね上がった。特に2001年以降、この傾向が顕著であるという。
また、2005年から2007年にかけて、若いバンクーバーのドラッグ中毒者が日常的に使用するドラッグとして、静脈注射によるコカインだけでなく、ヘロインを選ぶ傾向も減少していることがわかった。若い中毒者の間では、クラック・コカインとクリスタル・メスが最も浸透しているとみられる。調査が開始された当初には多くが静脈注射による使用者だったが、いずれかの時点で喫煙するかたちで体内に取り込む方法に傾向が変わった。とはいえ、依然多くの中毒者が両方の方法で使用していると回答している。
入手の容易さも明らかに
バンクーバーではクラック・コカインおよびクリスタル・メスは非常に安価で供給もたっぷりあるため、欲しいと思えばわずかな時間で容易に入手できるという実態も明らかにされた。実に90%の薬物使用者が10分以内でこれらのドラッグを手に入れることができると回答している。路上にたむろする若者の中毒者でも60%がクリスタル・メスの入手なら10分あれば十分と答えている。ハード・ドラッグと呼ばれるこの種の違法薬物も、マリファナを入手するのと同様の容易さ・気軽さであるとの回答も得られた。
調査の著者は、これはウエストエンドの路上の若者の話であり、郊外の高校生の話ではないと強調するが、安価であることと(バンクーバーでは2007年、ヘロイン1グラム当たりが20ドルであるのに対しクリスタル・メスは10ドルという相場だった)、使用法が簡単であるからという理由で、若者の間ではこうした薬物が好まれる傾向が強まっているという。なお、あらゆる種類のドラッグの値段はこの10年間、それぞれ比較的横ばいの状態だった(クリスタル・メスの値段の調査は過去3年のみ)。
中毒者のすさんだ生活
静脈注射を乱用する中毒者の生活については、50%が特定の住居を持っておらず、10%が住所不定の路上生活者であるという結果だったが、この割合は10年間、変化していない。また2007年、バンクーバーの路上でたむろする若い女性中毒者のうち、11.3%が過去6ヵ月の間に売春をしたことがあると回答し、静脈注射の中毒者でありHIV陽性患者の15.4%、陰性患者の14.0%が売春行為に携わっていると回答した。こうした女性の死亡率はBC州の一般女性と比べると、22倍にも跳ね上がるという。
このほか、2003年から2007年の間に、公共の場(路上、裏路地、公衆トイレ、公園、廃屋、駐車場など)で静脈注射を使用したことがないと回答した中毒者の割合に変化はみられなかったが(50%以上)、いつも公共の場で静脈注射を用いると回答した中毒者の数は20%(2003年)から10%に減少しており、この点では改善が見られた。しかしドラッグ乱用の回数が多い中毒者ほど公共の場で使用する回数も多くなっている。