APEC首脳会議 新たな成長戦略の策定へ
シンガポールで開かれていた第17回アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議は15日、長期的な経済成長の戦略策定を盛り込んだ首脳宣言を採択し、閉幕した。首脳宣言ではAPEC参加の21ヵ国・地域内を対象とするアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向けて基礎作業を進めていくことが明記され、あらゆる保護主義に反対する方針が強調される一方で、草案にあった「市場主導の為替相場」に関する言及が削除されたほか、温室効果ガス排出量削減の数値目標の設定は見送られた。
このほか主な首脳宣言の内容は、1)投資と貿易の自由化で参加国・地域が政策の連携を強化し、地域経済の統合を推進する、2)保守主義を排し、2010年中に世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の妥結を目指す、3)新時代のグローバル経済に合致した新たな成長戦略を模索する、など。
来年のAPEC首脳会議は横浜で開催。また米国が議長国となる11年はオバマ大統領の出身地、ハワイで開かれる。日本はシンガポール会議の論議を引き継ぎ、次回の議長国として、いかにリーダーシップを発揮し、新たな成長戦略を具体的にまとめることができるか、その手腕が試されることになる。
アジア太平洋経済協力とは
アジア太平洋経済協力(APEC)は21の参加国・地域からなり、法的な拘束力を持たない枠組み、オープンな対話、全参加者の見解に対する平等な尊重というルールの下で運営されている国際組織。決定は満場一致で行なわれ、決定事項は自発的に履行される。その理念は、アジア太平洋地域において開かれた地域協力を推進し、各国の経済成長を促し、多角的な自由貿易体制を強化していくこと。参加国・地域は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台北、タイ、米国、ベトナム。
今回の首脳会議には、米国のオバマ大統領、日本の鳩山首相、カナダのハーパー首相、中国の胡錦濤国家主席、ロシアのメドヴェージェフ大統領ほか、多くの参加国・地域の首脳や業界リーダーが出席した。
為替政策は盛り込まれず
議長国シンガポールのリー・シェンロン首相は、首脳会議閉幕後の記者会見で、「為替は会議の議題のひとつだったが一部の首脳が為替が不安定になる可能性や、政府が継続的に為替相場の管理に介入した場合に起こり得る問題について懸念を示した」と語り、当初宣言案に盛り込まれていた「市場主導の為替政策」に関する文言が削除された経緯を明らかにした。関係筋によると、米国と中国の間で意見が対立し、この表現について合意に至らなかったという。同様に「各国はすみやかに保護主義政策を撤廃する」という文句も削除された。
環境問題、政治的合意を目指すことで一致
環境問題では、12月にコペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、これまでの交渉成果に基づいた政治的合意を目指すことで一致。ただ、温室効果ガスの排出量の数値目標については、2050年までに1990年の水準から50%削減するという数値目標が草案で掲げられていたものの、先進国と途上国が対立をみせたため、具体的な数値は「大幅に」という言葉に差し替えられた。どの国が数値目標の削除を求めたかは不明。7月にイタリアで開催された主要国首脳会議では、首脳宣言で、2050年までに世界で少なくとも50%削減、先進国全体で80%以上削減するという目標が掲げられていた。
環境問題に関する首脳会合は、ラッド豪首相らの呼びかけで、鳩山首相、カナダのハーパー首相、オバマ大統領、胡錦濤国家主席らが出席した。COP15の議長を務めるデンマークのラスムセン首相が政治的合意の重要性を強調し、APEC参加国・地域のリーダーに協力を求めた。世界経済は温暖化ガス排出量削減とも深く関係していることから、経済の発展を話し合うAPECでもこの議題が取り上げられた。
鳩山首相はアジア重視のスピーチ
鳩山首相は15日、参加していたAPEC首脳会議の開催地シンガポールで、アジア政策に関するスピーチを行い、鳩山政権のアジア外交重視を宣言し、その柱となる自らの東アジア共同体構想について理解を求めた。首相は共同体のメンバーについて「理想と夢を共にする人々」と語り、幅広い層を受け入れる姿勢を示した。また、自衛隊の艦船を活用し、民間人や非政府組織(NGO)のメンバーを乗せて、太平洋・東南アジア地域で医療活動や災害活動、文化交流を行う「友愛ボート」を来年から開始することも表明した。