やっと天皇旋風が去って、また日々の静かな忙しさが戻ってきた。天皇制には賛成の人も反対の人もいるだろうが、初めてのカナダ公式訪問ということ自体は、日本とカナダの国交の歴史の中ではそれなりの1ページと言えるに違いない。
正直言って私は、いままで皇室には全くと言ってよいほど興味がなかった。両陛下がカナダに来られるということを聞いても、ふうん、そうなのか、という程度の気持ちしか起きなかった。
しかしこの度両陛下を間近に拝見して、とても不思議な気持ちに捉われた。普段あまり意識しない「日本人」という感覚を掘り起こされたような気分になったのである。友人の中にも、皇室も天皇も全然興味もなかったのに一度旗振りに誘われて行ったらそれ以後夢中になったという人が何人もいた。そして自分も日本人であったと再認識したというのである。
お二人から感じられる気品ある温かさは接した誰もが感じ、Tシャツ短パンで来ていた地元カメラマンも思わず感動の言葉をつぶやいていた。
お二人の、歓迎の人々に対する笑顔や挨拶は実に自然で、外向けとかおあいそといった印象が全くなかった。究めつけはオタワの小児病院で、子どもたちの前で皇后陛下が子守唄を歌われたことだ。決してお上手に歌われたわけではないが、とても心がこもっていて、決してメディア向けでない真心が感じられた。その皇后陛下を天皇陛下が隣でいとおしそうに見つめておられるのも素敵で、お二人の絆が目に見えるようだった。
それにしても今回の御訪問はかなりの強行軍で、体調もあまりすぐれないと聞いていたので、さぞやお疲れだろうと少々心配になった。
メディアとしては取材は大変だったが、行く先々での人間ウォッチングもまた楽しかった。ああいうところでは人間ついつい本性が出てしまうもので、たくさんの面白い人々を見学させていただいた。
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ところで、私の趣味のひとつは人間ウォッチングである。これは面白いだけでなく、思わぬところで思わぬことを発見し、世界が広がることがある。
人ごみは嫌いだが、たとえばダウンタウンの花火大会などはいろいろな種類の人が見られて実に楽しい。ある種のコンサートもなかなかだ。ずっと以前、まだ日本にいた頃だが、TVで夜中の3時頃から「イカテン(イカすバンド天国)」という番組をやっていた。素人ロックバンドの勝ち抜き歌合戦のようなやつで、めちゃくちゃヘタなバンドやちょっとうまいバンドが出てくる。ロックは好きではなかったし、その上ヘタな音楽なんて聴くのも嫌だったはずなのに、人間ウォッチングがめっぽう面白くて毎週楽しみに見ていた。この番組で10週勝ち抜いて、ほどなくしてプロになった「たま」という才能溢れる4人組バンドを知ることができたのは大きな収穫だった。つまり私は個性派バンド「たま」のデビュー前からのファンというわけだ。この「たま」がこの番組に初めて登場したときの「らんちう」という奇妙な歌が、私の一番のお気に入りである。これを言うと、この歌を知っている人は目が点になってしまうけれど。
(エディター: 宮坂 まり)