バンクーバーっ子は雨にも負けず、H1N1にも負けず… - 特 集 -

長い長い冬が終わったと思ったら、突然やってきた新型インフルエンザH1N1。
カナダに住む多くの人々には、実生活での影響はそれほど深刻ではありませんでした。
ところが、思わぬ影響を受けたのが、当地に暮らす我々日本人と、ビジネスその他で日本と関係を持つ人々。
訪日予定を日本の訪問先に断られて中止したり、あてにしていたビジネスがキャンセルされたり。
家族の法事に来るなと言われて帰国を断念した人もいたといいます。
日本に行けば行く先々で、カナダから来たというだけでバイキン扱いされた、という人も。
それもそのはず、日本国内は新種のインフルエンザの出現に騒然としており、ニュース番組のバックにはいつも、「危険地帯」カナダを真っ赤に塗った世界地図が映されているのです。
一方、当のバンクーバーではインフルエンザなどどこ吹く風。マスクをしている人の姿なんか見たこともなく、すべてが平常どおり。
ニュースや新聞では、日本の「過剰反応」がチャカされてジョークの対象になっていました。
確かに油断は禁物。でも、まず敵を知らねば戦えません。いざというときの対処にはしっかりした知識と冷静な判断こそが必須です。

発生から世界的な拡大までの経緯
3月18日 メキシコで新型インフルエンザとみられる症例発生。
4月13日 メキシコ当局はカナダに分析を依頼。
4月22日 メキシコ保健局が20人が死亡と発表、注意を喚起する。
4月23日 カナダから分析結果が届く。
4月24日 メキシコ保健局およびWHOが、インフルエンザに似た症状でメキシコで約1000人の患者と60人の死者が出たと発表。
 メキシコで公共の場の閉鎖が始まる。
 米テキサス州で感染者を確認。
4月26日 カナダで感染確認。
4月27日 スペイン、英国で感染確認。WHOは警戒レベルを「フェーズ4」に引き上げ、新型インフルエンザ発生を正式に宣言。
4月28日 ニュージーランド、イスラエルで感染確認。
4月30日 WHOは警戒レベルを「フェーズ5」に引き上げる。
5月 4日 世界全体で感染確定者が1000人以上に。
5月 9日 日本で感染確認。
5月16日 日本で感染確認 (検疫を除く日本国内で初めての発生)

新型インフルエンザの症状
 ・38度以上の急激な発熱(5日間ほど続く) ・咳 ・喉の痛み 
 ・頭痛 ・関節痛 ・悪寒 ・倦怠感 ・下痢や嘔吐がある場合も。
 季節性インフルエンザとほぼ同じ症状だが、場合によっては下痢や嘔吐が多い。

5月25日現在の感染状況
世界では――
米国内感染者6764人(死亡10人)
カナダ国内感染者921人(死亡1人)
日本国内感染者353人
世界46カ国で感染者12,654人
死者 世界で92人(WHO発表)
BC州では――
感染者数120人。主な場所は―
O Fraser Health:14
O Interior Health:3
O Northern Health:24
O Coastal Health:34(バンクーバー)
O Vancouver Island:15

インフルエンザとは
●日本語では流行性感冒。インフルエンザウィルスによる急性の感染症の こと。症状は風邪に似ている。
●高温、多湿に弱いので、温帯地方ではたいてい冬に流行する。
●季節性インフルエンザ(通常のインフルエンザ)は、毎年1千万人が感 染し、1万人が死亡する。
●インフルエンザウイルスは、そのたんぱく質の違いに基づいてA型、B型、 C型に分類されるが、このうちヒトに感染し発症するのは主にA型とB型。
 A型は、ヒト以外にもブタやトリなどを宿主とする。その表面に突き出 た突起の組み合わせの違いによって香港型、ソ連型に区別されている。
●A型は突然変異を起こして大流行することがある。(例;スペイン風邪)
●同じA型であっても毎年少しずつ変化しており、以前にA型インフルエ ンザに罹って免疫がある人でも、別のA型インフルエンザに感染し、発 症することがある

新型インフルエンザって何?
人から人に伝染するウイルス性のインフルエンザ。
今回騒がれているH1N1インフルエンザ(当初豚インフルエンザと呼ばれていた。後に改名)もその一つとして認定されている。
 実体: 全く新種の遺伝子を持ったインフルエンザウィルス。豚、ヒト、   鳥のインフルエンザウィルスの遺伝子が豚の体内で混ざり合っ  てできた。
 症状: 従来のインフルエンザとほとんど変わらない。
 危険性:5月13日、WHOがその時点での致死率を0.4%と発表。しかし  死亡者のほとんどはメキシコ。この内実は不明。
 感染者の層:10代、20代の比較的若い人が多い。高齢になるほど類似の  ウィルスに対する抵抗力を持っているのではないかと言われる。

なぜ豚インフルエンザって呼んだの?
ウイルスの遺伝子が豚のかかる豚インフルエンザに似ていたから。
しかし、後に、豚インフルエンザンのウイルスの遺伝子のほか、ヒトインフルエンザと鳥インフルエンザのウイルスの遺伝子も持つことがわかった。通常の豚インフルエンザはヒトには感染しない。(多少の例外がある。)
WHOは3月30日、豚インフルエンザという呼び方を、インフルエンザA(H1N1)と改めた。

そんなにこわい病気なの?
感染力は従来のインフルエンザと同様。しかし重症化する例は少なく、たいていは軽症のまま回復している。糖尿病や喘息などの人は要注意。新しいウイルスなのでだれも免疫をもっていないため、感染が拡大しやすい。

感染はどんなふうに起こるの?
・飛沫感染 セキやクシャミをしたときに飛び散ったウイルスを吸い込む   ことで感染する。
・接触感染 ウイルスがついたものが粘膜-目、鼻、口-に接触する。感   染者が口をおさえてくしゃみやセキをした後、その手でドア   ノブなどに触ると、そこのウィルスが付着する。その後そこ   を触った人がその手で目や鼻、口などに触れることで、粘膜   などを通し感染する可能性がある。
   ウィルスは、ものに付着した後、2時間以上生きることもある。

食物による感染は?
食べ物によって感染することはない。中心温度71度で新型インフルエンザウィルスは死滅するので、豚肉も適切に処理されていれば感染しない。

感染国からの輸入品は大丈夫?
インフルエンザウイルスは、長期間生存することはない。輸入品が感染を仲介することはないので、いつも以上の消毒はする必要はない。

今までのインフルエンザとの違いは?
ワクチンの有無。ウィルスは高温多湿に弱いので、インフルエンザは冬に蔓延しやすい。冬までにワクチンの製造が間に合うかどうかが問題。

鳥インフルエンザとの違いは?
鳥インフルエンザウィルスは呼吸器系だけでなく消化器系を含む全身感染を起こすが、豚に感染した新型インフルエンザは呼吸器系の感染だけ。

パンデミックって何?
pandemic。病気の世界的,広域的な流行。及びその流行病。感染爆発。
WHOはパンデミックの状況を6つの段階に分けている。
フェーズ4:新型インフルエンザがヒトからヒトに感染していることが確    認された状態。
フェーズ5:2カ国以上でコミュニティレベルの感染が継続している状態。
フェーズ6:上記の状態に加えて、別の地域1カ国以上でのコミュニティ    レベルの感染が確認された状態。

予防はどうすればいいの?
普通のインフルエンザと同じ。
・目、口、鼻などをむやみに触らない。
・手を石鹸で頻繁に洗う。手首や指の間も入念に。
・帰宅したときはうがいをする。
 最大の予防策は、洗剤による手洗い、うがいの励行。そして何よりも、  よく寝て、体によいものを食べ、体力をつけておくのが肝心。
・ワクチンが生産されれば、これを接種する。

ワクチン
 WHOの発表では、新型インフルエンザのワクチンの大量生産は、7月中旬以降になるとのこと。現在は、製薬会社にワクチン開発に必要な素材を提供するための準備を進めている。
 各国の専門家たちが開いた緊急会議の報告書によると、季節性インフルエンザのワクチンの生産を中止し、すべて新型インフルエンザワクチンの生産に切り替えた場合には、最高で年間49回分のワクチンが生産できることになるという。しかし、1人2回の接種が必要とのこと。
 WHOのマーガレット・チャン事務局長は、世界の製薬会社30社に季節性インフルエンザワクチンの生産を継続したまま、新型ワクチン生産のための準備を進めるように求めた。

マスク―WHOの報告書におけるマスクの効用
効果があるのは、発症した人に対して1m以内に近づくとき。
発症した人がセキやクシャミで飛沫を飛ばさないためには良い。
戸外を歩くときにマスクをかけることで予防になるという証拠はない。
  ※インフルエンザウィルスの粒子は0.08~0.12ミクロン。くしゃみ    などのつばきと一緒に体外に出たウィルスの塊は0.3ミクロン以上と   いわれる。しかし通常のマスクの粒子のすきまは最小で5ミクロン。

<57年以前に生まれた人に免疫保持の可能性>
 米疾病対策センター(CDC)は20日、1957年以前に生まれた人は新型インフルエンザ(H1N1)に対する免疫を持っている可能性があることを明らかにした。CDCは、新型と同じスペイン風邪などH1N1型のウィルスが、これと異なる型(H2N2型)を持ったアジア風の発生に伴い沈静化した57年に着目。分析の結果、スペイン風邪など57年以前のH1N1型への免疫が新型にも有効である可能性が高まった。今後さらに血液検査を行うという。  
 CDCによると、これまでに米国内で入院した患者のうち50歳以上は13%に過ぎないとのこと。
 スペイン風邪は1918~19年に大流行し、感染者はその後も発生。今回の新型は豚インフルエンザが変異したものだが、そもそも豚インフルエンザはスペイン風邪に由来するとされる。

新型のインフルエンザウイルス出現の仕組
(トリインフルエンザの例)
1)元々鳥インフルエンザウイルスを保有しているカモなどの水鳥が中国南部に飛来し越冬する間に、ガチョウなどの家禽類にインフルエンザウイルスが伝播する
2)中国南部は、家禽類、ブタなどの家畜と人間との接触が濃密な生活様式であるため、家禽類からブタやヒトに感染しやすく、そのため、特に、ブタがトリのインフルエンザウイルスとヒトのインフルエンザウイルスに同時に感染し、ブタの体内で混合、進化し、新たなインフルエンザウイルスが誕生することが考えられている。(なお、中国南部に限らず世界のどの地域においても新型インフルエンザが出現する可能性は否定できないことに留意が必要である。)
 昨今の鳥インフルエンザが脅威とされているのは、トリからヒトへと感染するだけでなく、このような大きな仕組みによってヒトからヒトへと感染する能力をインフルエンザウイルスが獲得し、ヒト間で感染が拡大する可能性が指摘されているからである。
        (厚生労働白書平成16年版より)

思わぬところで国民性が浮き彫りに……
日本
◆ フェース4になった頃、ニュースでインフルエンザ関係の時間は20分
◆ 「水際対策」として機内検疫。
◆ 米、カナダ、メキシコからの到着機の乗客すべてのマスクを配る。
◆ 機内で名前、住所、連絡先、体調などの質問用紙を配布。
◆ 防御服を着た検疫官が機内でサーモグラフィー検査で体温を計る。
※直行便だけ。経由して来た人は対象外。
◆ 感染が疑われた人の周りにいた旅行者は成田で1週間缶詰に。
◆ 修学旅行を取りやめた学校は全国で2001校。
※修学旅行中止の決定を大阪の教育委員会から受けた学校の中に   は旅行当日という学校もあり、生徒たちに駅から引き返させる   という事態まで起きた。
◆ 大阪に修学旅行に行った学校が、帰って来た日から7日間登校停止。
◆ 発熱相談センターを設置。神戸市では「戦場状態」と形容した。
◆ 業務委託を望んで多数の人材派遣業者が発熱相談センターに営業に。
◆ 生徒を海外研修に行かせた学校への批判、謝罪要請がネットなどで横行。
◆ 上記の学校長が涙ながらに謝罪の記者会見。
◆ 風邪で休んだ生徒は、登校すると「豚」と呼ばれたりするようになる。
◆ 発症者のいる市では、他の市に住む親戚に子供を預ける人も出た。
◆ カナダからの里帰り予定を、日本の親族に断られて断念。
◆ 発熱した人の診断を医者が拒否。
   ※発熱相談センターに行くように指示したものを、拒否と誤解し   た例もある。
◆ 感染者の出ていない学校の休校、集会の自粛や中止が相次ぐ。
※WHOは、学校閉鎖などは意味がないと言っている。
◆ 国内外の旅行予定がキャンセルで旅行社、旅行業界が騒然。
◆ 5月25日、厚生労働省が「インフルエンザ迅速診断キットによって、A   型陽性だった場合には、原則、疑似症患者の定義に当てはまる」という  通達を出した。
◆ 新型と診断された場合、大阪・兵庫などの蔓延地域は、通常のインフル  エンザと同じく、臨床症状にあわせて自宅療養を中心とする。しかし、  それ以外の地域では、症状を問わず、勧告入院の手続きがとられる。
◆ 商店ではマスク売り切れで手に入らず。インターネットのヤフー・オー   クションで、通常750円から950円で売られているマスクが2万5千円  で落札された。合計10,000枚のマスクを70万5千で落札した人もいる。  (出品者は50枚入りの箱を一箱924円ほどとして200箱出品していた。)
◆ 麻生首相がTVコマーシャル「冷静な対処を…」
◆ 高校生のアルバイトを禁止したところも。
カナダ
◆ ニュースでインフルエンザに関する話題に費やす時間は約2分。
◆ 基本的に平常どおりの生活。通常のインフルエンザと同じ対応、処置。
◆ カナダの保険局、BC州の保険局の発表では、H1N1インフルエンザに
  関する詳しい説明の後、対処に関しては以下のように書かれている。
もし自分や子供に症状がでたら。
 ● 学校やデイケアに行かせない。 
 ● ゆっくり休ませる。  
 ● 水やジュースなどたくさんの水分をとらせる。  
 ● 快適に過ごせるように。
 ● 熱、喉の痛み、筋肉痛などがあったら医師が勧める解熱剤を与える。   子供やティーンエイジャーにはアスピリンは与えないこと。ライ症候   群を引き起こす危険性がある。  
 ● きれいなティシュとふたのできるゴミ箱を側に置き、使ったティシュ   はすぐにそのゴミ箱に捨てる。  
 ● 頻繁に手を洗う。  
 ● 症状が出た人はできるだけ自分の部屋で養生する。
 ● もし心配な症状があり、専門家に相談したいときは、HealthLink BC    (811)に電話する。24時間体制。130カ国語の通訳サービスもある。
 ● その他、ホームドクターなどに電話して症状を話し指示を受ける。症   状のない人々は、通常通りの生活を続ける。学校へも、職場へも行き、   新型インフルエンザの発生が報告されている国に旅行してきた人と接   触しようとしまいと問題にはならない。
 ● また、セキやクシャミをするときは、服の袖でおさえてするようにと   書かれている。手で押さえた場合、ウィルスのついた手であちこちを   触って人にうつしてしまう危険性が高いからということ。
 今はほとんどなりを潜めた新型インフルエンザは、冬になると勢いを盛り返してくると考えられています。
 そして同時に、現在の弱い毒性がいつ突然毒性の強いものに変化するかは、誰にもわかりません。
 むやみに恐れる必要はありません。けれど、万一このインフルエンザがパワーアップしたときに冷静に正しい対処ができるように、常に正しい情報を得る努力とすぐれた判断力を養っておくことは、今の私たちに出来るでしょう。

参考資料:Ministry of Health Services of BC、Pablic Health Agency of Canada、FIGHTFLU.CA、MedicineNet.com、Centres of Disease Controland Prevention USA、
厚生労働省、国立感染症研究所感染症情報センター

Posted by admin on 6 月 19th, 2009 and filed under 今月の特集. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0. You can leave a response by filling following comment form or trackback to this entry from your site

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