野鳥の巣
春までに、冬の間蓄積した情報を基に巣箱の改良を行う。
この季節、野鳥の動きは静まって春に備えて力を蓄えるため、ある種の鳥は南下して越冬し、ある種は森の中で寒さに耐え、ある種は森や野原から民家の庭にやって来て草木のみを啄ばみ、植物の種などを与えるとむさぼり食べて飢えを凌ぐ。今が野鳥の巣を扱う者にとっては忙しい季節で、冷たい風や雨に当たりながら春に小鳥を支えた巣箱を掃除し、使用状況を記録し、病気や事故の有無を調べて廻り、壊れたものを補修したり新しい箱に取り替える作業が山積する。今コクィットラム地域でわれわれの仲間によって取り付けた箱が300個、そのほかに僕の関係するホワイトロック、アイオナビーチ、ミッションなどに100個近いムラサキツバメの箱が取り付けられている。
鳥の巣箱は1960年頃に設置が始まり、当事は板材を適当に釘で組み立て、穴を空けただけの粗末なものだったが、毎年冬になると集めたデータを基にして、次第に改良が加えられ、今は北米では鳥の種類によっておおよそのサイズと、更に大事な巣穴の大きさが決められた。鳥の巣は4つの種類に大きく分けられることは前に書いた。お碗型、洞穴型、釣り下げ型、引っ掻き形がそれで、お碗型が最も良く使われる巣型、約半数の鳥はこの型を使い、引っ掻き型はその簡易形で卵や雛がすっぽり収まる茶碗型に比べ、ただ地面や河原を引っかいて卵が転げ出さないようにする型、カモメ、ある種のカモなどが造る。釣り下げ型は比較的稀で、この地域ではBushtit(エナガ科の、チカディーよりもやや小型の鳥)の巣が良く見られるが、苔や地衣類などを使って長さ10~15センチほどの靴下を木の枝からぶら下げた巣で、眼の前にあっても意外に見逃される事が多い。
中南米から飛来する燕尾服のツバメは、今年、生息数の減少の危惧でカナダで登録された。土と枯れ草を口で捏ねて軒下などの壁に塗りつけお椀型の巣を作る。数の激減の一つの理由は家の軒下を汚されるのを嫌って家主が巣を落としてしまうことにある。
さて、洞穴型の巣はこの辺りが原生林で覆われていた昔、自然に大木の幹に出来たり、キツツキに掘られた穴の中に草やコケ類で造り上げる巣で、お椀型と同じく代表的な巣だった。ところがヒトの侵略によって森が伐られたり、穴の出来やすい老木が邪魔者扱いされて伐り取られて巣場を失い、チカディー、ツバメ類などの鳥の多くが絶滅の危機に襲われた。気付いた一部の野生愛好家達によって1960年頃から小鳥の再生が図られて巣箱の開発が始まったというわけだ。仕事を辞めて僕が真っ先に始めた勉強が鳥の巣箱についてだが、この20年余ですら巣箱の構造には驚くほどの大きな改良が見られる。北米中から集められる情報をもとに箱のサイズや巣穴の形などの基本が、当事既に出来上がっていて、Bird Studies Canada、Cornell Lab of Ornithologyその他の野鳥保護団体で纏められて、インターネットで公表されている。その他多くのサイトで巣箱の販売が行われているが、その多くは人間の好みに装飾されていて、鳥には有害無益なものも多い。
巣箱には何が大事なのか。むやみに大きいものは鳥が敬遠するし、小さすぎたら問題外、その常識的な構造に加えて、何より大事なのは巣穴である。巣穴は一般的に円形で良いが、時には横に広がる楕円もあり、鳥が翼を少し広げてやっと潜り込める様になっている。最も大事なのは、その巣を使う鳥の大きさにぴったりと合うサイズであること。大きければ巣主よりも大きな鳥に横取りされたり、もっと怖いのは外敵に巣に入り込まれて卵や雛を獲られる。巣穴の大きさと同じく大事なのが巣箱の底から巣穴までの高さで、巣の周りにいる野生動物や捕食鳥の脚が穴から差し込まれても雛に届かないだけの長さが必要で、一般的には最低15センチだ。雛が巣から穴までよじ登って覗きやすくするように、内側には段状の掻き溝をつけると良い。加えて大事なのは雨対策で、箱板の継ぎ目から雨水が漏れない様、板の継ぎ目に隙間があれば、箱の外側から鳥に無害なシリコンなどを使って出来る限り目貼りをする。僕たちは巣箱は毎年使い古しの巣を捨てたり、内部を清掃することで疫病や害虫の駆除をするので、そのために開閉しやすく、且つ安全な扉が必要で、そのための色々な工夫が施してあるのは添付の写真で見られる。
(読者で、庭などに巣箱を取り付ける事を希望される方は、最新の設計図を差し上げますので、『ふれいざー』までご連絡下さい。)