トムリンのシネマニア

オスカーに向けて賞レースがスタート:2012年の注目作品は

アカデミー賞の本番(2月26日)を前に、オスカーの行方を探る。

Hugo

ここ2年のオスカーは、いずれも二強の戦いだった。

2010年はかつての夫婦、ジェームズ・キャメロン監督とキャスリン・ビグロー監督がそれぞれの『アバター』と『ハート・ロッカー』で熾烈な戦いを繰り広げ、2011年は『英国王のスピーチ』と『ソーシャル・ネットワーク』が熱戦を展開した。しかし、2012年のアカデミー賞について言うと、先頭ランナーが誰なのかなかなか見えてこないレース展開で、オスカーの輪郭そのものもはっきりしない状態だ。

アカデミー賞の本番(2月26日)を前に、オスカーの行方を左右する有権者、つまりアカデミー会員たちは、賞シーズンのイベントや批評家の発言に耳をそばだてているにちがいない。 ノミネーションは、授賞式を間近に控えた1月24日火曜日の午前5時30分に発表される予定で、その前の1月15日には、新年の「集い」として最も注目すべき授賞式であり、オスカー予想に欠かせない前哨戦、ゴールデン・グローブ賞が放送される。もちろん、ゴールデン・グローブ賞の前にも、うんざりするほどたくさんのアワードが執り行われており、いくつかの作品がすでに王冠を手にしている。

The Artist

たとえば、12月の初めのナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(米国映画批評会議賞)では、映画創世記への敬意に溢れたマーティン・スコセッシ監督の "Hugo"(邦題『ヒューゴの不思議な発明』)が最優秀作品賞と監督賞を受賞した。これまでのどんな映画とも異なる3Dの卓越した使用が効果絶大の本作は、子供と映画ファンの両方を取り込むことができる作品に仕上がっている。これはハリウッドの最も尊敬されるに値するベテラン監督が放つ、業界が永遠に取り組むべき主題、「映画」についての作品だ。 "Hugo"は必ずオスカー争いに食い込んでくるだろう。

Extremely Loud and Incredibly Close

また、他の映画祭に先駆けて11月29日に発表されたニューヨーク映画批評家協会賞では、どこを取っても非の打ち所のないサイレント映画 "The Artist"が受賞した。この賞のすぐ後には、ワシントンDC映画批評家協会賞、インディアナ映画批評家協会賞、ニューヨーク映画批評家オンライン賞、ボストン映画批評家協会賞などが次々と発表されたが、いずれも "The Artist"が作品賞をさらっていった。一方でロサンゼルス映画批評家協会賞はアレクサンダー・ペイン監督の"The Descendants"(邦題『ファミリー・ツリー』)を作品賞に選んだ。家族をめぐるこの感動作は、優しさとおかしみとせつなさを喚起する、2011年の最も秀逸な1本。監督が脚本も手掛けた。昏睡状態に陥った妻の不倫を知った弁護士の夫に扮する主演のジョージ・クルーニーがみせる渾身の演技も必見だ。

War Horse


一方で、今後勢いを増してくるだろうと予想されているのが、第一次世界大戦を舞台にした感動作、スティーブン・スピルバーグ監督の"War Horse"(邦題『戦火の馬』)と、スティーブン・ダルドリー監督の"Extremely Loud and Incredibly Close"(邦題『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』)。ダルドリー監督の作品は、アメリカ同時多発テロ事件で亡くなった父(トム・ハンクス)が遺した鍵に合致する鍵穴を探すベくニューヨークを奔走する少年を描いた物語。両作品とも批評家からの評判は上々で、オスカー作品賞の呼び声が高い。

Midnight in Paris

このほか特筆すべき作品は、公民権運動時代(60年代)の米国南部を舞台に黒人と白人の姿を描き、この夏爽やかなヒットを放った"The Help"や、ウッディ・アレン監督のチャーミングで快活でコミカルで、それでいて現代に生きる我々に不意をつくような慈愛を示す"Midnight in Paris"。さらにサンフランシスコ映画批評家協会賞で作品賞を受賞し、批評家協会賞から絶賛されるテレンス・マリック監督の狂おしくも壮大な"The Tree of Life"。ビジュアル的にも魅力的なこの作品は、人間とはどこに属するものなのかという問いに対して、愛によってお互いが地球上で結び付けられているのだという心温まる答えを用意している。最後に、プロ野球世界を描いた息つく暇もないほどスリリングで知的な作品"Moneyball"。ブラッド・ピットに最優秀男優賞を、エーロン・ソーキンとスティーブ・ザイリアンの両者にオリジナル脚本賞をもたらす可能性大だ。

以下は最優秀男優賞、女優賞、助演男優賞、助演女優賞のノミネートが有力視される俳優陣:

主演男優賞

ジョージ・クルーニー("The Descendants")
ジャン・デュジャルダン("The Artist")
マイケル・ファスベンダー("Shame")
ゲリー・オールドマン("Tinker Tailor, Soldier, Spy")
ブラッド・ピット("Moneyball")
他.:ウッディ・ハレルソン.、レオナルド・ディカプリオ、マイケル・シャノン、ライアン・ゴスリング、デミアン・ビチル

主演女優賞

グレン・クローズ("Albert Nobbs")
ヴィオラ・デイヴィス("The Help")
メリル・ストリープ("The Iron Lady")
シャーリーズ・セロン("Young Adult")
ミシェル・ウィリアムズ("My Week with Marilyn")
他:ルーニー・マーラ、エリザベス・オルセン、オリビア・コールマン、フェリシティ・ジョーンズ、キーラ・ナイトレイ

助演男優賞

アルバート・ブルックス("Drive")
ベン・キングスレイ("Hugo")
パットン・オズワルト("Young Adult")
クリストファー・プラマー("Beginners")
マックス・フォン・シドー("Extremely Loud and Incredibly Close")
他:ジョナ・ヒル、ジェレミー・アイアンズ(ブラッド・ピット、アンディ・サーキス)、アーミー・ハマー、アサ・バターフィールド、ニック・ノルティ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エズラ・ミラー、ケネス・ブラナー

助演女優賞

ベレニス・ベジョ("The Artist")
ジェシカ・チャステイン("The Help")
ヴァネッサ・レッドグレイヴ("Coriolanus")
オクタヴィア・スペンサー("The Help")
シェィリーン・ウッドリー("The Descendants")
他:メリッサ・マッカーシー、マネット・マクティアー、ジュディ・デンチ、キャリー・マリガン

ハリウッドからリリースされる年間500本以上の映画のなかで、このコラムで挙げた20作品あまりが2011年のトップに君臨する良作だ。つまり、今月紹介した賞に最も近い作品群は、絶対に見る必要のある作品ということになる。さあ、新年早々、決着の舞台でオスカー像を手に入れるのは……。

The Descendants

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