特集

Occupy Everywhereなぜ?

景気不安や高い失業率に不満をもった若者たちが中心と行なわれた世界一斉抗議行動

Occupy Wall Street. ウォールストリート(アメリカ)photo by BlaisOne
格差社会に広がる不満

中東の民主化要求のための運動は世界中に飛び火し、深刻な経済問題を抱えるギリシャをはじめ、ローマやイスラエルなどでも大規模なデモが行なわれています。9月には、米国ニューヨークの金融街ウォールストリートでも集会がひらかれました。そして「世界一斉行動の日」と名づけた10月15日には、世界82カ国951都市で抗議行動が行なわれ、現在も続いています。多くの支持者を集めたこの世界的行動は、反面、要求のわかりにくさで、なんのためのデモかと首をかしげる人々が多いのも事実。誰が、何のために行っている抗議行動なのでしょうか。ここにその全体像をまとめました。

発端

カナダ、バンクーバーを拠点とするアドバスターズ・メディア財団が、同団体発行の雑誌Adbustersで米国ウォール街で政府や金融機関に対する抗議行動をするよう、雑誌のウェブサイトや購読者へのE-mailで呼びかけた。当初2万人を目標にしており、ツイッターや携帯メールなどで広まった。

Adbusters
カナダ・バンクーバーのアドバスターズ・メディア財団発行の隔月機関紙。カレ・ラースン氏が財団の創始者・主宰で雑誌の発行者。消費社会に対する警告をする。政治、社会問題、環境問題などをとりあげ、現在の大企業優先の政治や社会を痛烈に批判している。

経緯

9月17日にはウォール街に1000人ほどの人々が集まった。スローガンは「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)。デモ隊の1割程度の人々は徹夜でその場に居座り、ニューヨーク市警が介入して7人が逮捕された。そのまま居続けたデモ隊に全米の各地からも賛同者が集まり、9月中に80余人が公務執行妨害などで逮捕されている。

その際、警察が催涙ガスを使ったりローティーンの少女に手錠をかけて連行するシーンなどがYouTubeやTVのMSNBC、ABCで流れ、警察の横暴に抗議する人や、環境問題や労働問題などに抗議する人々も加わって、運動は拡大し、長期化していった。

こうした行動に呼応し、運動がアメリカ国内の他の大都市に拡大すると同時に、世界中に飛び火し、82カ国、951都市で大小の抗議行動が行われるようになった。

当初、景気不安や高い失業率に不満をもった若者たちが中心と伝えられていたが、運動が進むにしたがって中・高年齢層の参加者もめだってきた。

Occupy Rome ローマ(イタリア) photo by modenaroid
1.発端となった大まかな主張

  •  社会や経済の現実を人々に認識させ、考えさせる。
  •  権力を持つものは社会に対して責任を持つべきである。
  •  1%の超富裕層に99%の人々が牛耳られるのはおかしい。
  •  99%の人々は声を大にして主張すべきである。
  •  Glass-Steagal(銀行のレギュレーションの法律)をもう一度導入すべし。
    ※1933年銀行法で銀行・証券の業務分離を定めた条項。1999年に廃止された。

2.参加者の実態地域によって多少の違いがある

  •  収入がトップ1%を除く99%の人々を対象に呼びかけている。
    ※実際には、地域によって参加者の40%以上が高収入者のところもある。(Wall Streetなど)
  •  労働組合・教員・社会学者・経済学者・弁護士等(世界中)
  •  失業者・学生・失業の危機にある人。(世界中)
  •  極貧の人々(米国オークランドなど)
  •  環境団体、人権団体、などの活動家(世界中)
  •  上記の人々に加え先住民族、ニューエージなど多様(バンクーバー)

3.リーダーがいない

  • 毎日の会議で今後の活動、ポリシーなどを決める。この会議はGeneral Assemblyと呼ばれ、方針だけでなく、食料調達、マスコミ対応など、すべての動きを決める。これには、その場にいる全員が参加する。
    ※意見がある人が前に立って述べ、それに対して9割以上が賛成し、断固反対がいない場合  にはその意見が通る。

4.全体の共通した要求がない

ただし共通の不満はある。

  • 現代社会における、真の民主主義の崩壊。
  •  政府や金融機関、大企業の汚職に歯止めがかからない。
  •  格差の拡大や、その成立理由が不当である。
  •  それらの問題から発生する環境問題や社会問題、戦争に対する批判。

5.地域により運動の焦点が違う

  • ウォールストリート: 主として経済問題
  • バンクーバー: 環境関係が多いが、非常に多彩
  •  ボストン: 主として税金問題
  • イスラエル: 貧富の格差の拡大、中間層の減少、マスコミや大企業、政治などの汚職
    ※イスラエルは、この運動が呼びかけられる以前の7月からSocial  Justis Protestという名 前で運動を行なっていた。8月6には20万人、9月3日は46万人参加したといわれている。これは国民の総人口の6%が参加したことになる。

6.あくまで平和的で合法的な集会である

  • ただし、強制的に排除しようとする警察などにより、かなりの逮捕者を出した地域もある。

  • カリフォルニアのオークランド: プロテスターのキャンプを排除するために、警察が催涙弾やフラッシュボム、音響兵器を使ったりしたため暴力的衝突になり、102人が逮捕された。
  • ウォールストリート: 交通妨害や、銀行に入ったデモ参加者に対し不法侵入容疑などで、最低でも780人が逮捕された。
  •  シカゴ: 175人が逮捕された。
  •  サンディエゴ: 51人。警官の暴力による重傷者も出ている。
  •  アリゾナ: 約100人が逮捕された。
    ※運動参加者は逮捕された場合の対処法なども聞かされており、逮捕される際は無抵抗と決めているため、多くの人は数時間で釈放される。また、地域の弁護士なども人々にアドバイスをしている。

Occupy Londonロンドン(イギリス) photo by wheelzwheeler
集会の形式

  • テントを張って集会所で生活する人々がいる。
  • 毎日1回から2回の全員参加の総会(General Assembly)を行い、様々な案件に関する方針を決める。
    決定は全員が手振りによって行なう。手振りは、賛成、反対、断固反対などがある。絶対に自分は行動を共にできないと思える意見があがっている場合には、「断固反対」を主張し、その理由を述べる。
  •  参加者同士の通信手段として、ヒューマン・マイクを行っている。(発言する人の言葉を少しずつ回りの人が復唱し、それを繰り返して遠いところにいる人々に伝えていく。この方法で、マイクでは聞こえないところにいる遠い人にも伝達できる。また、到底受け入れられないような発言だった場合には、黙ることで伝達拒否できる。

マスコミの反応

◆ CBC:

  • ヒッピーの集会というスタンスで報道している。

※賛成派の経済学者・作家Chris Hedgesをインタビューして怒らせ、論争になって  論破されてしまった。

◆ MSNBC:

  • 基本的に賛成のスタンスで報道している。警察の暴力行為を痛烈に批判している。
    ※キース・オルバーマンの人気ニュース番組「カウントダウン」では、ウォールストリートからの手紙を全文読みあげたり、反対派への批判をするなどしている。 キースは運動が始まってからの報道ではネクタイをはずしてショーに出ている。

◆ CNN:

  • 中立的で、大企業の横暴に対するまとまりのない反対運動、という姿勢で報道している。

◆ FOX:  

  • 反動マスコミというイメージがあるため、レポーターが現場から追い出された。集会 に対してはアナーキスト(無政府主義者)と呼んでいる。

occupy Berlin ベルリン(ドイツ) photo By tranZland
運動に対する批判の声

  • 99%の人間の、1%の成功者に対する嫉妬である。※貧乏なのは自分自身の努力がたりないせいだという考えから。
  •  貧困層と富裕層に分かれるのは、適者生存(進化論の延長)である。
  • 「反対」のみで、ほとんど「要求」がない。
  •  街が汚れる。
  •  若者が遊び半分でやっていることにすぎない。

運動に参加した著名人

デイビッド・スズキ (生物学者、環境運動家)バンクーバー
マイケル・ムーア(映画監督)ウォールストリート
ジュリアン・アサンジ(ウィキリークス創始者)ロンドン
ティム・ロビンス(映画俳優・監督)ウォールストリート
スーザン・サランドン(映画俳優)ウォールストリー
トノーム・チョムスキー(言語学者・思想家・哲学者)ボストン
その他多数の芸能人、ミュージシャン等。

その他の賛同する著名人

ポール・クルーグマン(ノーベル賞受賞経済学者)
オノ・ヨーコ (アーティスト)

Occupy Vancouverから

Alison Richardsさん
Alison Richardsさん

オキュパイ・バンクーバーの現場のスポークスマン。本業は映画プロデューサーで7人の孫がいる。

「バンクーバーの多くの人々がオキュパイ・ウォ-ルストリートに共感はしていますが、ここにいる人たちと同じに見られるのを恐れているんだと思います。オキュパイ・バンクーバーはヒッピーが多いという印象がありますが、決してそればかりではありません。タバコもマリワナも嫌いな人も多いけれど、皆平等の立場でやっているだけ。

この運動はまだ始まって1週間で、現在インフラを作っている段階です。

我々がここにいることで、セキュリティなどに大きな額の税金が使われているという人がいますが、ホッケーの試合のためにどれだけの額の税金が使われているか考えてみてください。ホッケーはここの文化だから私は尊重しますが、プロテストにかかる税金のほうがはるかに少ないのは間違いありません。

街が汚れるという人がいますが、大企業は世界を汚しているんですよ。私は、私の子供や孫たちの未来を心配しているんです」                   (2011.10.22)

10月29日世界一斉デモ

ロビンフッド税の導入を要求する一斉行動が世界各地で開かれた。11月3、4日にフランスのカンヌで行われる、G20 首脳会議を射程距離において行われた抗議行動である。 オーストラリアのメルボルンでは千人以上が参加したが、大雪で氷点下まで気温の下がったニューヨークをはじめ、多くの都市ではそれほどの大きなデモにはならなかった。

ロビンフッド税とは
投機目的で行なわれる銀行の為替取引に税をかけ、その税収を、国内外の貧困撲滅と、地球温暖化防止のために使おうというもの。ノーベル賞受賞経済学者ジェームス・トービンが提唱し、トービン税という名前で知られている税制。これで得た税収入を格差是正や環境のために使おうと英国の50に上る市民団体が2001年に主張した。英国の場合、投機目的の通貨取引に0.05%程度の課税をすることで、英国だけで1年に2千500億ポンド(約4000億カナダドル)の税収があるとして、昨年からこれを実現しようと呼びかける動きがある。

昨年4月には、世界53カ国、約1000人にのぼる経済学者など経済専門家が、G20の首脳にあてて0.05%のロビンフッド税を導入するよう求める共同書簡を送った。署名者には、ノーベル経済学賞受賞したポール・クルーグマン博士をはじめ、ハーバードやケンブリッジ、プリンストンなどの大きな影響力をもった大学教授が数多くいる。

今年9月、EU(欧州連合)の欧州委員会は、2014年にはこれを導入すると発表している。

しかし、この税制は全世界が同時に導入しなければ抜け道ができてしまうので意味がないという批判もある。

10 月29日。ニューヨークでは氷点下のみぞれの中、お年寄りも負けてはいない。
報道

米国の警察から、警官の暴力を映した映像をYouTubeから削除するようにGoogleに要請がきたが、Googleはこれを拒否した。

Occupyの中の出来事

◆ロンドンでは、人々が警察や市当局に追い出されないように、クリスチャングループがセント・ポール寺院の周りにいる人々の外側に囲いを作った。

バンクーバー・アートギャラリー横にはキャンプ用テントが100以上並んでいる。(カナダ)

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