人類のエネルギー展望(3)
石油や天然ガスは生物起源でなく、地球の誕生と共に自然に作られて、地中深く埋もれていた炭化水素(天然ガスと原油)が地殻変動などで、地表近くまで滲み出したもの
落合 栄一郎
[5] エネルギー源
さて、こうしたエネルギー需要増大を賄うエネルギー源を検討してみよう。
1)原子力
原子力なるものが必然的に作り出す放射性物質の漏洩や、使用済燃料にも残存する放射性物質が出す放射線が、人類ばかりでなく、地球上のあらゆる生き物の健康を損なうことは明らかである。しかも人類は、使用済みの放射性物質の安全な保管方法も未だに見つけられずにいる。おそらく、今回の福島第1原発の事故は、絶対に安全などとは言えない原発から人類が脱却する、よい機会を提供する。
原子力発電を推進する側は、原発は現在の地球温暖化の原因とみなされている、2酸化炭素を発生しないから、クリーンでグリーンなエネルギーであると宣伝し、原発ルネッサンスという雰囲気を盛り上げようとしている。しかし、原発の全過程(ウラン鉱の掘削から、使用済み燃料の処置まで)に使われるエネルギー(それを供給するための電力生成のために出る2酸化炭素)を考慮するならば、決してグリーンとはいえない。
また、捨てられる熱(冷却用など)も地球温暖化に寄与している。その上、このような全てに必要な(廃炉処分も含む)費用も考慮するならば、原発は経済的には成り立たない。 日本ではあまり話題ならないが、ウラン、プルトニウムに代わるトリウムという物質を用いる原発が、より安全であり、資源(トリウム)もウランより豊富にあるので、将来のエネルギー源として喧伝されている。しかし、ウラン原発同様に、安全性や放射性廃棄物の処理などの問題は解決されていない。
2)化石燃料—石炭
石炭は、生物起源であり、それには炭素以外の様々な物質が含まれており、その燃焼に伴い環境に放出される。その環境汚染は、非常に問題である。どのようにきれいに燃焼するようにできるか、技術の進歩が望まれる。しかし、この資源は限られており、やがては枯渇する。
3)天然ガス、石油:生物起源ではないかも
石油が生物起源のものであるとすると、数十年後には枯渇するはずである。そう言われて久しいが、枯渇の兆候は未だない。油田の開発はまだ盛んで、新油田が発見され続けている。どうしたことであろうか。これには、石油や天然ガスが生物起源でなく、地球の誕生と共に自然に作られて、地中深く埋もれていた炭化水素(天然ガスと原油)が地殻変動などで、地表近くまで滲み出したものであるという「石油無機起源説」が関係している。
これを裏付けるような証拠が年々増えているようである。これが真実とすると、石油資源は、これまで推定されていた量を、無限とはいえないまでも、かなり上回るであろう。今までこのような原油と思われるものはすでに採掘されている。しかし、技術的な問題が残されているようである。例えば、2010年のアメリカメキシコ湾での、BPの深海油田からの原油漏出事件では、その技術的問題を露呈した。先ずこの油田の深さである。
これは以前の生物起源とされてきた通常の油田よりもかなり深い位置にあり、その点でも生物起源でないのではと言われた。現在の技術の対応が、深さ故に難しい。もう一つの基本問題は、深さに関係するが、原油・ガスの圧力が、通常の場合よりも非常に高いことである。今までの通常の技術では、何時またあの事件と同様な事故が起きないとは限らない。事実、今回の中国渤海湾の海底油田からの石油漏出事故(もう既に2ヶ月ほどになる)は、同じ現象かもしれない
4)自然エネルギー(a)水力
水力発電は、もっとも古くから使われてきたものである。可能な場所は限られており、その多くはすでに開発されている。これから新たに開発する場合は、発電所設置に伴う環境、生態系への影響を十分に検討しなければならない。このエネルギーの大幅な拡張は望めないと思われる。これは広い意味では、太陽光による(水の蒸発を太陽光が行い、それが水となって地上に戻った結果である)。
5)自然エネルギー(b)風力
風力は、かなり古くから機械エネルギーとして利用されてきた。それを発電へ特化させ、効率を上げる工夫が近年盛んになり、多くの国で、風力発電がかなり広く使われるようになってきた。これにも環境問題があるが、立地条件の選択と技術の更なる進歩で解決できるであろう。ただし、これも太陽光の利用と同様に、定常的に発電できるわけではなく、風任せである。蓄電やその他の電力源とのコーデイネーションが必要である。これは技術的に解決可能である。
6)自然エネルギー(c)地熱
日本は地熱発電に有利な条件をもっている。環境問題はいずれにしても付随するが、技術的に解決はできるであろう。
7)自然エネルギー(d)潮汐
海洋の水位は、時々刻々に変化する。それは天体からの重力の影響だが、その水位の変化を発電に利用するのは、水力発電と似た原理である。
8)自然エネルギー(e)太陽光・熱
全地球面に降り注ぐ太陽光エネルギーは平均して毎秒8.9 x 1016Jと推定されている。とすれば、2800000EJ/年となる。実際は曇り空などのためこの全てが降り注ぐわけではないが、数パーセントにしても莫大な量である。先に述べた人類の全エネルギー消費量500EJの数桁上である。すなわち、太陽光エネルギーのみで人類のエネルギーは理論的には十分に賄えるはずである。
(a)太陽光発電:太陽光を直接電気エネルギーに転換するものである。これは技術的にも経済的にもまだ不利ではあるらしいが、これも技術的解決が可能である。
(b)太陽光熱:太陽からの熱で水を熱するのに使うことは古くから行われている。これをさらに効率的な技術にする努力が必要である。この熱を使って発電することも。
(c)太陽光の間接的利用:例えば、日中は太陽光発電の一部で回したポンプで水を高いところに上げて置き、夜間にはそれを利用して水力発電をするという考え方がある。また、太陽光を利用して水を分解し、できた水素を蓄積し、必要な時に燃料電池(水素の酸化)で発電するという方法は非常に有望である。太陽光のエネルギーである種の化合物を高エネルギー状態に変形しておき、太陽光のない状態で、その化合物が元の安定な状態に戻る時、熱を放出する。その他、色々な使い方が工夫できるであろう。
9)自然エネルギー(f)バイオマス
生物体構成物(炭素化合物)を総称してバイオマスというが、これを様々な仕方で燃料にしようとするものである。これはカーボンニュートラルであるし、再生可能なエネルギーとして推奨されるが、バイオマス燃料を作る際に必要なエネルギーが、その全体の評価から欠落しているように見受けられる。
10)その他
原発では、発生する熱の全てを電気に変えているわけではなく、かなりの部分を捨てている。それは冷却水(が加熱されて)として環境に垂れ流されている。この熱も十分に活用する余地はある。また、全てのエネルギー獲得過程で、エネルギーの変換効率を上げることによって、エネルギー供給量を上げる努力が必要である。さらに、電力などのエネルギーの最終利用の過程でもその効率を上げる余地はまだかなりある。また現在、電気は交流という形で送電されているが、日本では、関東(50サイクル)と関西(60サイクル)でサイクル数が違うために電力の交換が不便であることと、交流では送電過程での損失が大きいので、直流にして送電すれば、損失が少なくなる上に、サイクルの違いは問題なくなる。などなど、未だ改善の余地は残されている。