光と風のなかで

ハチ類も大事な自然の一員(その2) 

ハチは3個の複眼機能を持った眼を頭の頂点に持っている

建屋の庇に出来始めたスズメバチの巣

この話の主題のハチは比較的中型のPaper Wasp(アシナガバチ)で、紙と同じ材料である木や草を噛み砕いて作り出したパルプを使って吊り鐘型の巣を造る。良く知られているのは胴のくびれた12頭身、触角が桃色の、体長約2センチのヨーロッパ原産種のEuropean Paper Waspと、殆ど同じ形でやや小さい、触角が黒色の原生種、Paper Waspsの2種、原産種は4-5月に巣を作り始めるのに対し、ヨーロッパ種は3月に小鳥よりも早い時期に巣を作る。ヨーロッパ種は獰猛と思われているが、それは偏見で、多くの野生動物と同じく、人が挑発しない限り彼らは有益無害な生き物だ。

女王蜂が数年の寿命を持つミツバチなどの一般の蜂と生態は異なる。アシナガバチなどのWaspsは前年の秋に産まれた女王蜂は直ぐに冬眠し、早春に覚めると、先ず数個の巣穴を木の幹や建屋の庇に作って受精していない雌の働き蜂を生みつける。間も無く羽化した働き蜂は更に巣穴を増やして女王蜂に本格的な産卵を促し、20-50匹の団体を作り上げる。充分な数の働き蜂が産まれるとやがて、女王蜂は前年に身体に貯蔵しておいた精子を使って来年度の女王蜂と、オスのハチをそれぞれ数匹産む。新生の女王蜂に受精を終えたオスたちと、働き蜂、家主の女王蜂はこうして一生を終わる。新しく産まれた女王蜂は木の皮や根の中、草むらなどにもぐって冬眠するという命が繰り返される、というのが彼らの一生である。

ツバメの巣箱の入り口を塞いだアシナガバチの巣

さて、僕の抱えるハチの問題というのは前記のとおり、ヨーロッパ種のアシナガバチが小鳥が巣にはいる前の巣箱の天井に傘状の巣を付けて住み込んでしまうことだ。家の庇や木の幹、垣根などに紙のような薄い筒状の巣穴を傘の形に上からぶら下げて並べ、巣は下側に開いたままの形に作るアシナガバチは、ツバメの巣箱を格好な巣場とするわけだ。これに対し、針の毒の強いスズメバチ(Hornet)の巣は、時には数百匹以上の大家族になって大きなフートボール状に作られ、筒状の巣は数段に重ねられ、外側を耐水性の厚いパルプで覆い、最下部に数センチの出入り口が一つだけ作る。それぞれの役目を持つ生態系を害したくはないが、生息の危機に曝されているツバメなどの小鳥の巣作り前に箱が占領されると、当然の事として小鳥はその巣を使えなくなるのが困るわけだ。毎年冬に小鳥の巣箱を調べて来たが、ハチが巣を作るめに小鳥が使えなかった箱がこの数年で巣箱全体の3割ほどに増えている。ミドリツバメは15年ほど前までに古樹が伐り採られて巣を失い危惧種となったが、人工の巣箱が出来て絶滅の危機を乗り越えた謂れの小鳥、今年はカナダ最大の野鳥保護団体のBird Study Canadaよって、ツバメ(Barn Swallow)が異なる人間社会の変化が原因で絶滅危惧種に指定されたが、その話は別の機会に紹介の予定だ。

建屋の庇のアシナガバチの巣、蜘蛛が幼虫を狙っている。

アシナガバチの植物繊維で作られる蜂の巣は、雨さえ掛からなければ箱を使う必要はなく、彼らにとっては建屋の軒や屋根裏などの選択肢は未だ有るから、種の生存に影響を与えないはずだ。実は小鳥の巣箱の天井部にポリシートやアルミフォイルなどを貼って蜂に巣を作らせない試みはあるが、巣箱にプラスティックを使う事に毒性の点などから一寸疑問があったし、言う事は簡単だが実際にあの小さな5x5インチの天井にプラスティックを貼るのは簡単ではない。そこで人畜に無害なパラフィンワックスを天井に塗布し、熱風で天井と壁に沁み込ませる事を思いついた。

それを実行する前にハチの生態を勉強したくて、大学院生、マイクを紹介してもらったわけだ。彼は大学の山地に沢山の蜂箱を実験用に取り付けて生態を研究しているが、平野部でのハチの研究地を探していたので、僕がハチの多いコロニーファーム公園のツバメの巣場を案内した。その時に実験的に今年作った蜂除けにパラフィンを塗った小鳥の巣箱を見せ、「君の造ったハチ用の巣箱の天井裏にワックスを塗り、ハチが巣作りを予防出来るか出来ないか実験出来ないだろうか」と持ち掛けると、即座に賛成して、早速蜂の巣箱を8個、無料で僕の家まで届けてくれた。箱の一部を分解してその天井にパラフィンワックスを溶かして塗りこみ、公園の許可をとって、内面塗りと塗らない箱を一組として、数箇所に取り付た。しかし、この相談が出来たのは6月末、既に殆どのハチは巣作りを終えていたが、今年一年この実験台は風化させたあと、来年の夏には効果が明らかになるはずである。

ヨーロッパアシナガバチの頭の上に有る3点も複眼 (マイクによる撮影)

マイクから聞いたハチの話で特に興味があったのは、ハチの目の構造である。ハチには無脊椎生物の特徴として一組の複眼を持つが、そのほかに3個の複眼機能を持った眼を頭の頂点に持っている。これは飛行軌跡をコントロールする機能が有るらしいということだ。この眼では一体どの様に世界が見えるのか、このところ悪化の一途をたどる自分にこの眼を移植してもらえないものかと考えるこの頃である。

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