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これからのエネルギーとカナダ

個々の家で出来る省エネ

中島 尚

エネルギー問題の話をする時に我々は、ともするとそれを作り出すことしか考えません。菅首相の太陽光電池1千万戸設置のぶち上げなどその良い例です。ふれいざー誌6月号の特集「とにかく探せ、代替エネルギー」は発電と蓄電に関し要領よくまとめています。しかし、そこに書かれているものの多くは経済面と技術面で難しいものです。それでは我々は手をこまぬいて経済的な新技術を待たなければならないのでしょうか?

これはある意味では正しく、多くの人がその研究と技術開発に励んでいるにもかかわらず、夢のような技術や製品はそう簡単には実現しそうもありません。

しかし、画期的な新発明を待たずに目的を達する努力も必要です。エネルギー問題を論じる時に、それを作り出す際に出る二酸化炭素と放射能漏洩の危険性や環境破壊の問題も合わせて考えなければならず、これ等の面でも現状をいかに改善するかの地道な行動も必要です。

  1. 東電の原発事故で明らかになったのは「電力供給側の言うほど発電容量の不足はなかった」ということです。これまで電力会社や日本政府は、「電力が足りない、足りない、もっと発電所を作らなければ」と言い続けてきました。東電を例に取れば、電力需要は平成6年頃から最大瞬間需要60ギガワットほどで頭打ちになっているのに、平成28年には64ギガワットの需要があるとの予測を公表していました(稼働率も考慮すると原発8基ほど新規に必要)。
    しかし、電力需要の一日の変化をなるべく少なくすることにより大雑把に言って25パーセントほどの最大需要の削減ができます。即ち、最大発電能力は瞬間最大需要を満足させなければなりませんが、その瞬間最大需要を減らすことができれば、最大発電能力も減らすことができます。そのためには、深夜の需要の少ないときに余剰電力を溜めておき、昼間になったらそれを放出して需要を満たす一助にすればよいわけです。
    その電力を溜める電池の技術に関しては、日本が世界で一番進んでいます。これまで、電力会社は需要者が電力を溜めることに難色を示してきました(電力が足りない、足りないと言いにくくなる)が、今度の原発事故でこの政治的環境も変わり、これから急に家庭用や事業者用蓄電装置の設置が増えてくるでしょう。また、最近出始めた電気自動車も蓄電装置として使うことができます。
  2. 現在稼動中のエネルギー変換装置、即ち発電機や自動車のエンジン、の効率は悲しくなるほど低く、火力発電では平均すると40パーセント、自動車のガソリンエンジンは25パーセントほどで、残りの60パーセント、75パーセントは無駄に空気を暖め且つ余計な二酸化炭素を放出しています。自動車を例に取ると、ガソリン1リットルをエンジンが消費し、車を10キロメートルほど走らせると、そのうち750ミリリットルのガソリンは地面に撒いて燃やしているようなものです。
    火力発電の効率も最新式のものでは60パーセントにも向上しています。また、自動車もハイブリッド車が1リットル25キロメートル走るとするとそれだけで効率が倍増したことと同じです。また、エンジン自身の効率の向上にも各自動車メーカーは地道な努力を重ねています。最近の技術傾向をみると、これで1パーセント、あれで0.5パーセントと「良いと言われていること」は全て採用してきています。即ち、現在すぐ採用可能な技術で、火力発電も交通も30パーセントあるいはそれ以上の省エネは可能なのです。
  3. 6月号特集にもある燃料電池は、そもそも自動車用として開発が進められてきました。しかし、いかんせんそのコストはまだ非常に高く(車1台5千万円にもなる)、実用になるまでにはまだ時間がかかります。一方、この燃料電池を家庭用の電力源として使うのはどうでしょう?
    既に日本ではパナソニック社などがエネファームという商品名で市販しています。自動車用の燃料電池の出力は少なくとも70キロワット程は必要です。一方、家庭用電源としては1キロワットもあれば、その出力を電池に溜めながら使い、一日中電力会社からの電気を必要とせずオール電化生活ができます。これは、電力網からの電気のお世話にならないという意味で究極の節電です。
    この燃料電池が必要とする水素は都市ガス(メタンを主成分とする天然ガス)を改質(reform)して作ります。改質の工程で副産物として出る熱を台所や風呂場のお湯を沸かすのに使えば、総合効率は60パーセントにもなり、これも二酸化炭素排出削減につながります。燃料電池の開発はかなり以前からBC州にあるバラードという会社がやっていましたが、自動車用ばかりに目を向けていたのでカナダは出遅れています。せっかく天然ガスが豊富に産出するBC州やアルバータ州があるのに…。
    この小型燃料電池と蓄電池の組み合わせで電力網の負担を低減する方法は、未だに石炭を燃料とする発電所の多い北米でも今後必要になってきます。折りしも8月にBCハイドロが申請した設備投資のための電気料金値上げが却下され、いずれバンクーバーでも節電が必要になるときがきます。家庭用深夜充電装置や天然ガス燃料電池の出番です。これ等の装置は屋根上太陽光電池と併用すれば尚一層の電力網負担軽減に繋がります。日本の新エネルギー技術と豊富なカナダの天然ガスを組み合わせた新しいビジネスが生まれます。

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