原子力発電とは?(4)
原発事故から5ヶ月、不透明なことがまだ多く残されている。
福島原発事故の概要と放射能汚染の現状
落合 栄一郎
3回にわたって、原発の事故の基本的なこと、その結果放出される放射能はどのような影響を生物に与えるかについて検討してきました。今回は現状(7月上旬の時点)を検討してみましょう。
まず、事故の内容の概略。
福島第1原発の原子炉は3重構造になっていて、1番内側に燃料の入った炉があり、それが圧力容器に包まれていて、それがコンクリートの建屋に入っています。1—3号炉は、運転中に地震が起こり、自動停止には成功しました。炉内にある燃料棒の間に、制御棒が差し込まれて核分裂は終息したと思われます。しかし、地震で炉と管の継ぎ目がずれるなどの状態になったようです。その直後、津波が襲って冷却装置が不能になり、燃料棒の冷却が継続できなくなりました。1号炉では、そのため炉内の温度が上がり、水を注入しても水位が上がらず、従って冷却効果もあまりありませんでした。この結果起ることがいわゆる「メルトダウン」であり、付随して水素爆発も起こりました。続いて、2—3号炉でも同様なことが起こりました。
第1回でも述べたように、運転を停止しても、燃料棒の中に出来た放射性物質の崩壊熱(または放射熱)が引き続き出てくるので、それが安定したレベルになるまで冷やし続けなければなりません(場合によっては数10年も)。それが出来なかったので、燃料棒が加熱されて、燃料(ウランのペレット)を包み込んでいる容れ物の金属が融けてしまいました。これにより、燃料棒中のウランを含む放射性物質が出てきてしまいます。こうした高温物質が炉の底に溜ります。これがメルトダウンです。
事故から2ヶ月半も経った5月中旬頃になって、東京電力は、1号炉のみならず、2、3号炉でもメルトダウンが起ったことを認めました。1号では炉の底から圧力容器内に融けた燃料が漏れて、さらに建屋の床にまで達しているようですが、2、3号炉ではまだそこまでは行っていないようです。さらに進行すると、高温の融解物が建屋の底のコンクリートを融かして、地下に流れ出す可能性も否定できません。このような状態になっているかどうかは、未だ確認されていません。
もう一つはっきりしていることは、水素爆発が起ったことです。炉内の温度が上がると、燃料棒の被覆金属(ジルコニウムなど)と水が化学反応を起こし、水素ガスを発生させます。その水素が空気中の酸素とある割合以上混ざると、爆発を起こします。これが水素爆発(水素爆弾とは違う)です。
こうして、燃料棒中にある放射性物質が、炉の外へ様々な経路を経て出てきています。これが今回の事故による環境の放射能汚染です。その第1は震災後数日のうちに起った水素爆発。これは1号炉で3月12日、3号炉で14日、2号炉で15日に起こりました。
しかし、その前に炉内の圧力を調整するために、中の気体を逃がすヴェントという操作も行っていて、これによるものも含めて、空中にバラまかれたものが初期の放射能汚染の主な原因でした。これはかなり広範囲にバラまかれたことになります。これによる放射性物質の拡散は、すでに様々な状況下で観測されています。例えば、福島県や近県の農作物、牧草、牛乳、肉牛、水、土壌の汚染、静岡県、神奈川県などのお茶の葉の汚染など。ウランやプルトニウムなどが、北米大陸の西海岸やハワイ、グアムの大気中でも3.11以降急激に増えたことも観測されています(米環境保護局のデータ)。
7月2日の報道では、福島市内の子供10人の尿から最大10数μSvの放射性セシウムが検出されたそうです。明らかにこの子たちは体内被曝しています。また、福島県の子どもたち1000人の被曝調査で、45%の子供が甲状腺に被曝しているという結果も報告されています。最高値は0.1μSvで、調査した側は問題にならない被曝量としていますが。
もう一つの放射性物質の出る経路は、冷却水などが炉内の放射能で汚染されて、それが、原子炉建屋内、トレンチ、地下水、海などに出てきています。炉が地震で、水が漏れるようになってしまったからです。6月下旬の時点で、12万トン以上の汚染水が溜っているそうで、それの出す放射線量は77万テラベクレルぐらいのようです。この汚染水から放射性物質(主としてセシウム−134/137)を取り除く器械をアメリカとフランスから導入して除染につとめていますが、まだ十分な稼働レベルまでいっていないようです。
しかし、7月2日の報道では、東電は2、3号炉(1号炉もか)では、浄化した汚染水を再注入する循環系統が働き出したとの発表を行いました。その詳細はわかりませんが、汚染水から十分に放射性物質を除き、それを外部に逃がすことなく循環でき、炉心の温度をコントロールできるならば、最悪の事態は、避けられるかもしれません。しかし、炉からのもれが塞がれたのかどうか不明です。
4号炉についてはまだ予断を許さない状態のようですが、すでに地下に拡散した汚染水もかなりの量があるでしょう。そのさらなる拡散をどう防ぐか、早急に有効な対策を講じないと放射能環境汚染が拡大し、住民の健康、生活、農業、畜産業などに多大な影響を及ぼすでしょう。
といっても、こうした汚染水は、すでにかなりの量が海洋へ出ていっているでしょう。それによる海の生物の汚染と、魚などの食品としての安全性など、不透明なことが多いのが実情です。