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インタビュー特集 3 作曲家 植松 伸夫さん

2011年7月27日、バンクーバー・オーフィーム・シアターでのコンサート前に植松伸夫氏にインタビュー。

植松 伸夫さん

世界で最も人気があるといわれるロールプレイング・ゲーム「ファイナル・ファンタジー(FF)」シリーズの作曲家、植松伸夫氏。植松氏は、ゲーム音楽界における第一人者で、世界中に数百万人といわれるのFFファンの憧れの存在である。FFシリーズはゲーム音楽界で始めてフルオーケストラを使い、音楽界でも高い評価を受けている。テーマ曲がオリコンシングルチャートで19週連続1位になるなどファンに熱狂的に支持されており、ファイナル・ファンタジー交響組曲の世界ツァーは毎回チケットが早々に完売する。

海外のファンと会うお気持ちは?

植松: どの国にいってもコンサート前はどきどきします。コンサートが始まって皆さんが喜んでくれてる顔を見るとほっとしますけど。

このようなゲーム音楽のコンサートを開こう思ったきっかけは?

植松: すぎやまこういちさんという作曲家が始めてドラゴンクェストのゲーム音楽のコンサートをやったんですけれど、僕らが2002年にFFのコンサートをやったころには実はゲームのコンサートというのは下火になっていたんです。なんかほら、流行ってるのにやるのって嫌じゃない。その頃一段落したんで、じゃあ、ここで海外でいっぱつやろうか、って。あれは明らかに狙ってやった感じです。そしたら思いのほかウケたので、それから結構調子ついちゃった感じですかね。
それに、FFの1作目から忙しい毎日が続いてて、コンサートをやるとかいう発想にもならんかったですよ。FF10が終わった頃、ちょっと振り返ってみて、何曲か自分で「いい曲」と思える曲もたまってきたし、ここらでやってみようかな、と。

シリーズで一番楽しかったコンサートは?

植松: 2005年頃に海外で初めてロスでやったんですよ。海外なんかでやって「客来るのか?」という不安がすごくあったので、満杯だったときは本当びっくりしましたね。まさか外国でFFの音楽がこうも求められてるとは思ったこともなかったので、それは本当よく覚えてます。

フルタイムの作曲家としての生活は?

植松: 僕はきちんとしてますよ。朝はできれば5時に起きて、8時ぐらいまで作曲して、8時から犬の散歩行って、帰ってきてコーヒー飲んでトースト1枚食べて。最近はそれからジムに行くんですよ。4キロぐらい歩いたり走ったりして。
午後は、色んな雑用が入ってきて集中できないんで、時間が余ったら作曲をするぐらいですかね。
朝は頭が働いてないんですよ。だから感覚だけで作曲するので、悩まない。頭が明確なときって、「本当に今作ってる音楽はこれでいいのか?」って悩み始めるとわけわからなくなるので、頭がぼうっとしてるときに、たんたんたーんって最後までやってセーブします。実際できたものはそんな変わんないですよ、悩んで作ったものと。

仕事で一番楽しいことは?

植松: 録音とかがすべて終わったときが一番楽しいですかね。それまではぼんやりと頭の中で創造したものが、実際にオーケストラが入ったり、歌い手さんの歌が入ったりして完成したときは本当にやっぱり嬉しいですね。

リハーサル風景
ここ数十年でゲーム業界はどういうふうに変わったと思いますか?

植松: ゲーム機がすごく進歩して色んなことができるようになりましたよね。一番初めのファミコンの頃は絵もピクセルな感じだし、音も電子音3つしか使えなかったりして非常に不便だったんですけど、最近はそれこそハリウッド映画並の音も映像も作れるようになりましたからね。でも僕はそれがゲームの面白さに比例してるとは思わないんですけどね。

RPG(ロールプレイング・ゲーム)の曲を作るのと、他のジャンルのゲームの音楽を作るのとは作業に違いはありますか?

植松: 作曲の作業の違いはないんじゃないですかね。音楽のスタイルの違いはあるでしょうけれど。例えばシューティングゲームに綺麗なメロディーつけてもしょうがないですもんね。でもRPGだと綺麗なメロディーをつけるところもあるし、バトルシーンにはハードな音楽もつけられる。エンディングでは感動的なメロディーもつけられるし。RPGが一番いろんなジャンルの曲が書けて僕は好きですね。楽しいです、やってて。
街のテーマだったら、それが怪しい街なのか、穏やかな街なのか想像するのも楽しいし。キャラクターのテーマも、エアリスってどんな性格なんだろうとか、クラウドってどんな人なんだろうって考えるの好きですしね。全部楽しい。

FF7のゴールドソーサーのテーマや、FF8のアルティミシア城など、音楽理論的にすごく複雑な曲がありますね。とくにバロックとの共通点が多くありますが、スタイルはどうやって選ぶのですか?

植松: どういうふうに決めてるのかなあ。…そんなに計画的に仕事するタイプじゃないんですよ、僕は。じゃあ、一番初めに何やるかというと、メインテーマを作ろうとするわけですね。今やってる作品の顔になるわけですから。それで、「ああ、なるほどね、こういう音楽がメインになるのね、じゃあバトルをこんな感じにして」、と割り振っていくような感じかな。「じゃあ、ここにバロックみたいな音楽があっても面白いかもなあ」という風に。だからメインテーマを先に作ってから、周りのバランスをとって決めていくって感じですかね。

全部の曲を聴いてからやっとなんとなくモチーフが全部つながっているのがわかってきて、それがすごく面白いです。

植松: なるほどなるほど。

コスプレで会場に

カバーやアレンジ曲が数多くありますが、ゲームの音楽がどのように伸びていくと思いますか?

植松: どうなんでしょうかね、昔僕なんかの小学校、中学校の頃って、ヒットチャートで流行ってた音楽に埋もれて育ったわけですよね。それを聴くと当時のことが全部思い出せる。今の若い人たちにとったら、小さい頃ゲームをやっているので、ゲームをやっていると当時のことが思い出せる、そんな感じになってるんじゃないですかね。

一流のゲーム会社で作曲家として働きたい人が大勢います。そのような若手の作曲家にどのようなアドバイスがありますか?

植松: まずは辞めないことですね。例えば今僕はこういう仕事してますけど、やっぱり若い頃は作曲の仕事につきたいただの若造じゃないですか。周りには才能あるやつがたくさんいるんですよ。どう考えてもこいつらには勝てないってやつらばっかりなんですけど、うまい具合にみんな辞めていくんだよね。最終的に一番才能ないやつが残っているという、僕はそういう結果だったんですよ。
しんどいですよ、食えない生活を何年も続けるのは。だから賢いやつだったら、「こんなことやってるよりも、田舎帰って県庁に勤めたほうがいいんじゃないか」って、こんなヤクザな稼業を夢見るのは諦めちゃうんですよね。僕はあんまり計算高い子じゃなかったので好きだったからやってただけで、賢いやつが勝つとは限らないわけですよ。鈍いやつだけが残ってる可能性もあるわけで。とにかく何かを成し遂げたいんだったら辞めないことですよ。辞めたらそこで全部終わりですよね。
辛いんだけど、もしかしたら後一息でその壁は越えられるかもしれないじゃないですか。でもそれは今誰にも見えていない。今自分がどこにいるかって誰にもわかんないわけですよ。

今までに苦労したことはありましたか?

植松: 苦労は、そりゃなんだって苦労と思えば苦労だし。でも今に至る必要な道だったとしたら、それは避けて通るわけにはいかないわけなんで、それはその人の見方なんじゃないかな。いろんなことを苦労、苦労、って思いたがる人いるけど、そういう人ってなかなか何かを成し遂げるのしんどいんじゃないかな。
僕だってしんどいことありますよ。毎日ぐらいしんどいことありますけどね。本当に、人間って思ったとおりになるのよ。っていうか、思ったとおりにしかならないのよ、どうやら人生って。何かに出会ったときにそれをしんどいっていうふうに僕の心が選択するのか、いやいや、これはしょうがない、これはもう、この先に行くには避けて通るわけにいかないから、越えちゃおうって軽く行こうとするか、それはもう自分が決めてんのよ。どの一瞬、どの一瞬も、自分がハッピーになるか、アンハッピーになるか、自分で選んでる。だから、自分の思い通りになりますよ、人間って。どんな仕事とも同じですね。植松:うん、同じですよ。

正式に作曲の勉強をしたことはないと聞きましたが、どのように勉強したのですか?

植松: 独学です。初めて音楽に接したのは、11歳か12歳のころ、祖父母の家でギターを見たとき。弾き方もわからなかったけど、祖父に頼んで家に持って帰ってきた。そして、ティーン向けの音楽雑誌に載っている楽譜を見て練習したんだ。

音楽を仕事にしたきっかけは?

植松: 今のようになるなんて想像もつかなかったよ。稼がなくちゃならんから、とりあえず2、3年この仕事をしようと思った。本心は映画音楽を作りたかったんだけど、まさかこんなに長い間ゲーム音楽を作るようになるとは考えなかったな。でも結局はこれが僕にとってベストだったんだよ。

ゲーム音楽と他の音楽を作るのとの違いは?

植松: 当然、スタイルが違うね。音楽の作り方はすごく違う。モチベーションや、チーム全体として何を要求しているかが大きな要素になる。

ご自分の音楽のどれが一番好きですか?

植松: 1曲選ぶのは難しいね。ものすごくたくさん作曲してるから。しいて言えばFF2の“An Call”かな。FFシリーズの象徴であるという意味で。それとFF14の”Answers"は僕にとって特別だね。

好きな音楽家はいますか?

植松: いろんな種類の音楽が好きだからなあ。一人だけ選ぶのは無理だな。例えば、ビートルズとエルトン・ジョンのCDはカーステレオに全曲持ってるよ。

一緒に仕事をしたい音楽家は?

植松: 2007年はFFの20周年だったんで、今までかかわったクリエーターみんなで飲みに行ったんだ。もう一度彼らと一緒に仕事をするのが夢だね。この25年で我々は随分腕をあげたけど、ゲームを作るモチベーションはずっと変わっていない。むしろ高くなってる。だからみんなで仕事ができたらすごくいいと思うんだよ。

作曲家志望の若者にアドバイスをください。

植松: あんまりいろいろ付け加えないこと。最近の音楽は複雑すぎるものが多い。曲を紹介することから始めて、その曲のムードや焦点にあわせてアレンジしていく。カーペンターズのように、AメロディからBメロディに続いて、最後にCを入れる、というのが僕のやり方だよ。
そして、できるだけ沢山の音楽を聴くこと。我々がインスピレーションを得ることができるすばらしい音楽があふれているんだから。

ファンとふれいざー読者に何か一言。

植松: 基本は、僕は、笑いながら生きていくことだと思うよ。うん。笑ってないとしんどいじゃん。笑って生きるほうが楽しいでしょ。だからつまんない現場に遭遇しても自分から、こう、笑いを提供していかないと。

ゲーム、ファイナル・ファンタジーの一場面

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