光と風のなかで

燕(ツバメ) 

バンクーバー近郊のコロニーファームにツバメの巣を取り付ける。

巣立ったばかりのミドリツバメの家族

BC州に飛来するツバメは全て渡り鳥で7種類。Tree Swallow(ミドリツバメ)、Violet-green Swallow(日名不明)、Cliff Swallow(サンショクツバメ)、Bank Swallow(ショウドウツバメ)、Northern Rough-winged Swallow(日名不明)、Barn Swallow(ツバメ)及びPurple Martin(ムラサキツバメ)の7種である。このうちTree SwallowとViolet-green Swallowの2種、およびCliff Swallow、Bank SwallowとNorthern Rough-winged Swallowの3種はそれぞれ似ていて、遠くからは見分けが付きにくい。多くは中米以北で越冬して3月頃からBC州に戻るが、Purple MartinとBarn Swallowは南米のブラジルやペルーで越冬するために帰巣が遅く、特にムラサキツバメはブラジル辺りから北上するので5月半ばから6月にこの地に戻り7月に産卵する。彼らの生存は越冬地の気候にも大きく左右され、特に当年産まれの若鳥は越冬地での餌の状態によって、生存率は平均すると30 %ほどである。

ツバメの夫婦

日本人には昔からなじみの深いツバメ(Barn Swallow)は「燕尾服」を着て、建物のひさしの下に雨を避けてカップ型の巣を、土と枯れ草を唾で混ぜて壁に密着させて造る種で、世界各地に生息するが、カナダではこの20 年ほどこのツバメの数が急激に減り始めた。越冬地の南アメリカの中部付近で何かが起こっている様だが、詳しいことは未だ解っていない。この種はカナダでも一般民家の軒下などに巣を造るが、巣の下に糞を落とすので、ペストとして巣が駆除されて住処を失い大きな打撃を受けた。この冬、僕も属しているカナダの著名な野鳥保護団体、Bird Study CanadaがBarn Swallowを東部のヒバリと共にカナダ全土を対称とした「Species at Risk」(絶滅の危険度が認められる種)のリストに掲げた。この種の絶滅のリスクのあるツバメとしては、ムラサキツバメが既にあって、1994年以来僕もその復活に携わって来て、いま回復の途上にある事は前にこの欄で書いた。

更に数年前にこの欄でも書いたが、ツバメの託児実験はミネカダ公園内の巣場で行った。これはバーナビーの野生救護協会でのボランティアーの時代、春先に施設に送られてくる多くの未熟のツバメを異なる種のツバメの巣に託して、どの種が異種の、或いは同種でも違った親の、雛を育てられるかを2年に渉って試験した事がある。その結果、ツバメは異種の雛は全て嘴でつまみ出して除外するが、ミドリツバメやイワツバメは雛を全て受け入れた。僕の解釈では、ツバメのようなカップ状の巣では雛の色や形が容易に見分けられるのに対し、巣穴を使う種では識別が付きにくいからではないか、ということだった。

Barn Swallow(日名ツバメ)は胸が茶色を帯び、長い尾の先端が二つに割れ、燕尾服の名が生まれた優雅なツバメで、普通BC州には5月頃に帰巣する。巣は前記の通り泥を主材料とするため、巣の近くには粘土質の泥水が必要で、防水性に乏しいためにその巣は雨のかからない古い樹の洞か、木製の外壁を持つ建屋の庇の下に造らなくてはならない。昔の建物の外壁は荒削りの木材であったために、巣材の密着が良くて原生樹林が無くなった後も格好の巣場を提供してきたが、今は先ず粘土質の湿地が少なく、さらに多くの建屋の外壁はプラスティックに変わってしまい、折角出来上がった巣がちょっとした風や振動で落ちてしまう。又、巣の下に沢山の糞を落とすので、巣が完成する前に家主が掻き落としてしまう事も多い。日本のTVの番組では、農家の土間にツバメが巣を作るとそのすぐ下に布切れや網を取り付けて糞が土間に落ちるのを防ぐ事が紹介されていた。

Bird Study Canadaのアナウンスを見て直ぐ、ツバメの巣箱の試作を思い立った。ミドリツバメやムラサキツバメ、そのほかの小鳥からフクロウ、コウモリなどの巣箱は良く作ってきたが、このツバメが必要なのは屋根と、巣を固定するひさし、そして面の粗い木の板があれば良く、これを取り付ける場所から望ましくは100メートル以内に粘土質の湿地がある事が条件である。そこで直ぐ気付くのがコロニーファーム。早速公園の係りの友人に持ちかけると二つ返事で賛成してくれたので、試作品を数個つくり、数日後に取り付けた。

ツバメの巣の試作品

構造には二種があり、一つはひさしに屋根のみ、いま一つはそのひさしの下に少し大き目の薄い板を取り付けて汚物をキャッチするようにした。取り付けた時は既に6月半ば、残念ながらその時までにツバメはほとんど巣を造り終わっていたはずで、それでも今取り付けておけば、次のシーズンまでには構造の風化が進み、鳥に取ってはなじみのある状態になるだろう。ツバメの巣箱の今年の成果を諦めていると、彼から電話。「キヨシ、Barn Swallowが訪ねてきたぞ!」と言う。僕はその時すでに雛を育てていたBarn Owl(メンフクロウ)の事かと一瞬勘違いした。メンフクロウが4月に卵を産んだ話は5月号で紹介したとおりだが、この1週間前に実は2羽の雛が孵った事を確かめていた。電話の知らせは、ツバメが新しい巣箱に出たり入ったりして居心地を確かめていた事だった。そのツバメはその箱を来年に予約をしていたのかも知れない。

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