現状におけるコミュニティ・ビジネス
コミュニティビジネスは当事者の主体性を前提としており、自治体などのバックアップもその当事者の主体性を損なわない対応が肝要――中根先生がコミュニティビジネスの現状を解説。
日本でも、コミュニティビジネス(community business)と呼ばれる新たな形態のビジネスに一段と強い関心が寄せられています。
これは、「みずからの地域を元気にするために、また地域の問題を解決するために、住民が主体的に取り組む地域事業」(堀内信孝)で、具体的には、介護、医療・保健、子育て、環境、災害支援、観光・交流、就業支援などが含まれます。
現状におけるコミュニティ・ビジネスは、福祉分野が中心となって展開されており、その人員構成としては、中高年齢層・女性の割合が多くなっています。
さらに現状をみると、たとえば横浜市では次のようにコミュニティビジネスを特徴づけています。
①地域のニーズや課題を事業機会として捉え、事業収益をあげることで活動費用を生み出す「ビジネス」として解決する。
②事業を通じて地域社会に貢献する。
③地域との信頼関係の中で事業を行っている。
④サービスの担い手は、株式会社、有限会社、NPO法人、商店街など様々である。
従来のボランティア活動などとは異なって、当事者みずからが収益モデルを構築し、一定の利益確保を志向する取り組みは画期的ですが、その試みには多くの困難がともないます。ちなみに横浜市の実態調査では、コミュニティビジネス運営上の主な課題として、①人材の不足(38.2%)、②資金繰り(27.5%)、③人材育成(23.9%)、④会員数の伸び悩み(19.9%)、⑤安定収入の少なさ(17.5%)、⑥活動拠点の確保(16.3%)があげられています。いずれも構造的な問題であり、一朝一夕に解決することは期待できません。
コミュニティビジネスは当事者の主体性を前提としており、自治体などのバックアップもその当事者の主体性を損なわない対応が肝要となります。
たとえば、事業所が従事者にとって重要だが不足していると考える能力・知識は、マーケティング戦略立案や市場調査、商圏、立地調査に関する知識、消費者行動に関する知識、資金調達に関する知識など、企画関連の能力・知識が中心です。それに対して従事者個人では、事業に直接関連する知識、技能・技術または業務経験がほかに比べて多くなっています(厚生労働省。以下、同様)。このような事業所と従事者個人との認識のズレにも十分注意する必要があります。
ともかく、コミュニティビジネスを立ち上げた者は、地域活動への関心度が高く、過去に携わった仕事での知識や経験を生かそうと思って活動に参加しています。
また、コミュニティビジネスを通じて得たものは、「地域における人とのつながりやネットワーク」であり、コミュニティビジネスを通じた地域再生の可能性がうかがえます。
ある自治体では、「まちづくりの経営力とコミュニティビジネスの可能性」について議論されています。
そこでは、商店街などの組織でエレベーターの管理やごみ処理などを共同で事業化し、コストを下げる取り組み事例などが紹介されており、地域課題に踏み込むことでビジネスチャンスが生まれることなどが指摘されました。
また、行政や補助金に頼る運営手法を批判し、商店街の自助努力が必要と強調されました。そして、地域に根を張った中小事業所だからこそ、色々な人や団体と手を組んで市場を広げていくことができると主張しています。
さらに若年層では、「ビジネスの常識やマナー」、「職業に関する意識が高まった」、「自分の今後のキャリアプランに対する考え方」を得たと感じています。コミュニティビジネスが若年者の職業意識形成の場として機能することも期待されます。
このように、コミュニティビジネスの社会的効用は大きく、その取り組みは今後一段と重要なものになっていくと思われます。
経済産業省は、「地域新成長産業創出促進事業費補助金」として、新しい公共の担い手として期待されるソーシャルビジネスおよびコミュニティビジネスの創出に向けた各地の取り組みを支援しています。すなわち、経産省ではNPOや企業などが主体となって、福祉やまちづくりなど地域の課題の解決に取り組むソーシャルビジネスおよびコミュニティビジネスの普及に力を入れているのです。
「コンソーシアム新事業創出展開支援事業」として、ソーシャルビジネスおよびコミュニティビジネスの事業者と営利企業などが協働・連携する契機をつくり、ビジネスを創出する取り組みを補助することにしています。
Photo: sgarbe84