来春卒業予定の大学生の就職内定率最悪の事態
来春に卒業を控えた大卒の就職内定率は、著しく悪化している。中根教授が就職氷河期を分析。
日本国内の景気は、依然、低迷状態を続けています。企業レベル(とくに大企業)では増収増益がもたらされている企業も少なくないのですが、それが一般市民レベルともなると、状況は一向に改善されているとは言えません。
そのことを最も端的に象徴するものの一つが、来春に卒業を予定している学生の就職内定率の著しい悪化です。
すなわち、来春卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日現在)は、前年同期を4.9ポイント下回る57.6%だったことが今月(11月)中旬、文部科学省と厚生労働省の調査で判明しています。この結果は、現在の方法で統計を取り始めた1996年以降、最悪の事態で、景気の先行きが不透明な中で、学生の就職事情が一段と厳しくなっているのです。
両省によれば、大学生の内定率は、リーマン・ショック直後の2008年同期(69.9%)から2年間で12.3ポイントも低下しています。同様に短大生も、昨年同期より6.5ポイント減の22.5%で過去最低でした。
来春の最終的な時点で、こうした状況がどの程度好転するかは分かりませんが、いずれにしても事態は深刻です。
改めて言うまでもなく、このような状況の背景として、既述のように、長期にわたる景気の著しい停滞やグローバリゼーションの「荒波」等があげられますが、実は、そればかりではありません。すなわち、雇用に対する企業側の対応に大きな変化がうかがえるのです。
周知のとおり、近年、多くの企業が正規社員の雇用を目立って控えるようになってきています。かつて「日本的経営」として賞讃された終身雇用や年功序列の制度は間違いなく崩壊しつつあります。
企業側の立場では、長引く景気低迷の下で、事業継続をはかるにはコストをできるだけ引き下げて、収益構造を改善する必要があります。こうした事情から、企業は非正規社員の採用を余儀なくされているのです。
しかし、ここで「企業とは何か」が改めて問われていることもまた事実であり、その意味で、企業を上手にマネジメントする重要性が一段と強まってきているのです。
ちなみに、「マネジメントの巨匠」と言われるドラッカーは、マネジメントの三つの役割をあげています(上田惇生)。
第1は、それぞれの組織に特有の社会的機能をまっとうすることであり、事業を通じて社会に貢献することです。
第2は、それぞれの組織にかかわりを持つ人たちが生き生きと生産的に働けるようにすることです。
第3は、世の中に悪い影響を与えないことであり、みずからの存在と活動のゆえに世の中に与える「負のインパクト」をなくすことです。
これらの三つの行為はいずれも、人間の根本的な規範にほかなりません。ドラッカーの説くこれらの「三つの役割」を改めて考えてみると、今の世の中は、ドラッカーが想定した「理想の姿」とはかけ離れたものになっていることが明らかであり、その点で、企業社会のさらなる改革が強く求められているのです。
さらに、ドラッカーは次のようにも指摘しています。
「企業は社会的組織である。それは、共通の目的に向けた一人ひとりの人間の活動を組織化するための道具である。」
具体的に、ドラッカーはたとえば職場コミュニティ(Self-Governing Communities)と責任ある社員の重要性を指摘しています。ここで職場コミュニティとは、働く者本人たちに、仕事の設計、組織、シフト、休暇、残業、安全、福利厚生など職場の問題について責任を持たせるというものです。このことは、「組織が長期にわたって繁栄を続けるには、組織内の人間が、知力においても真摯さにおいても、自らの能力を超えて成長できなければな
らない」という発言にもよく表れています。
以上に見てきた諸事情から明らかなように、企業が非正規社員の採用によるコスト削減に安易に取り組むことは、本来の企業の望ましい姿ではないし、このような企業の対応は、むしろ人的資源の脆弱化をもたらし、みずからの組織力を削ぐことになり、中長期的には大きな損失をもたらす可能性があるのです。
他方で、正規社員と非正規社員が混在する職場環境にあって、従業員のモチベーションやモラルを望ましいレベルに維持するためには、経営者や管理者、現場の責任者は、個々の従業員の価値観や置かれている状況の理解に努め、従業員の多様性について従来以上に十分な考慮を払う必要があります。