日本の企業社会

デジタル・デバイド(2)

インターネットは積極的に活用することで、日々の生活を豊かにすることができる。しかし、本当にその価値を活用するためには、しっかりした情報分析能力と情報倫理をわきまえた情報発信能力が不可欠である。

前回からデジタル・デバイドを取り上げています。今回はその続きです。前回でインターネットがSC(社会関係資本。価値的な人と人とのつながり)を活発化させると述べましたが、他方で、インターネットがSC形成という点からみて良好でない面もあります。

第1に、まさにデジタル・デバイドの存在です。SCの研究者は、インターネット利用者の大部分が当初、「若く、教育水準が高く、収入の多い白人」であったとしています。依然、この状況は解消されていません。

第2に、インターネットと社会参加との関係では、インターネットが不活発だったグループを動員しているのでなく、むしろ政治参加における既存の偏りを増幅しています。ブログ等による情報発信が活発化していますが、「サイレント・オーディアンス」(物言わぬ観客)の存在が圧倒的に多いのです。

第3に、インターネット利用によって抑うつ感が高まり、対面的接触が減少するという指摘もあります。

また、電子掲示板やブログ等で何かミスをしたりすると一斉に攻撃する風潮もしばしば見られます。インターネット上では匿名性が高いので、余計に攻撃が過激化してしまうのです。

第4に、携帯電話をめぐる事情があげられます。携帯電話は老若男女を問わず身近なツールとなりつつあります。個人のインターネット利用端末について見ると、携帯電話等の移動端末の利用者数が2005年末の時点でパソコン利用者数を上回っています(総省)。

ともかく、携帯電話の急速な拡大とそれによるインターネット利用がわが国では特徴的ですが、SCとの関連で注目すべきことは、パソコンによるインターネット利用が社会参加にプラスの効果をもつのに対して、携帯電話によるインターネット利用にはそのような開かれた社会的側面が弱いという傾向です。

さらに、デジタル・デバイドとの関連で考える必要があるのは世代間格差です。たとえば近年、ICT活用によって地域社会の「人のつながり」を形成・強化することで地域社会の活性化をめざす地域SNSが国内でも着実に展開されてきていますが、この新たな取り組みは希薄化しているコミュニティ(社会共同体)の「絆」を強化しつつあります。

インターネットの積極的活用により、新しい知見や人とのつながりの拡大・強化など、高齢者にとっても日々の生活を豊かにする価値創造を無理なく実現することができます。

ここで重要な点は、インターネットへのアクセスがそのまま単純にその効用を享受することにはならないことです。実は、このことこそがまた別の意味で、デジタル・デバイドを生み出す決定的要因となるのです。

その1つは、インターネットを真に価値的に活用するためには情報分析能力が不可欠となるという点です。インターネットの情報には、虚偽情報や意図的なウソ、デマ情報も数多く含まれています。インターネットには、正しい情報か否か、信頼性の高い情報か否かなど、情報の質を事前にチェックする特定の機能があるわけではありません。

インターネット上では情報発信者を特定するのがきわめて困難なため、発信した情報に対する責任が不明確になり、社会的に影響の大きなデマや他人を傷つけるような情報発信が数多く発生し、社会問題にもなっているのです。

もう1つは、情報倫理等を十分踏まえた上で、社会にとっての価値的情報を提供するという情報発信能力が求められているという点です。たとえばブログが注目されていますが、ブログではコメントを用いた情報交換やトラックバック(ある他人のブログの記事に自身のブログへのリンクを作成する機能)を通じた関連情報の取得が容易です。しかし、広告や他サイトへの誘導を目的とするスパム(迷惑メール)投稿の増加が問題となっていることから、投稿のスパム判定を効果的に行うフィルタリング(有害サイトアクセス制限)手法が求められているのが現状です。

また、情報発信の発達が、著作物や公序良俗に反した不正コンテンツよる事故や事件も増加させています。

しかし、たとえばアメリカの市民社会ではNPOが様々な情報発信を行っていることによって支えられているという報告もあります。

このように見てくると、むしろインターネットを活用して、情報分析力や情報発信力を涵養するという考え方が必要です。

結論づけて言えば、インターネット利用者の各々が何よりも自律化をはかることが、種々の意味での「デジタル・デバイド」に対する「処方箋」となることを正しく認識すべきでしょう。

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