デジタル・デバイドについて考える
インターネットがここまで普及してくると、便利な反面、情報通信技術(ICT)に精通している人と縁遠い人の間に格差が生まれてくる。これが企業であれば、競争に勝てるかどうかという問題も生まれてくる。
今回と次回にわたって、「デジタル・デバイド」について考えてみたいと思います。
多くの人が実感しているように、インターネットは、その利用者に対して従来にはない便益を多く与えてくれます。
距離・空間を超えて瞬時に人間同士をつなげる機能は、文化ないし文明のレベルで今後一段と大きな影響を与えることでしょう。また、障害者や高齢者、単独での外出が困難な人たちにとっても、情報収集や就労機会の拡大、さらには自立や社会参加などを支援する「希望の技術」となっています。
しかしその一方で、「デジタル・デバイド」が話題になることも多いのです(デジタル・デバイドとは、ICTを使いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる格差をいいます(Wikipedia))。
ここで改めて注意を喚起したいのは、デジタル・デバイドが本来、多義的であるということです。
一つは、単に狭義の「情報リテラシー」(情報機器を操作する能力)のレベルの問題であって、誤解を恐れず敢えて言えば、必ずしも深刻に考える必要のない格差です。
すなわち、何もインターネットによる情報収集でなくても、テレビや新聞、雑誌などによって対応できます。むしろ、直接的な見聞の方がはるかに有益な場合も多いのです。
また、eメールでなくても、電話や手紙、さらには直接的なコミュニケーションで十分に代替できます。
もっとも、「習うより慣れよ」であり、情報機器の著しい普及に伴い、情報リテラシー自体も着実に向上しているのが現状です。
それに対して、もう一つのデジタル・デバイドは、たとえば富める国と貧しい国の間に深刻な不平等性をもたらす格差です。
この「情報の非対称性」は、知る者と知らざる者との間に時として経済格差などを生み、さらにそれを増長させる可能性もあります。
この類のデジタル・デバイドが過度になれば、社会的な不公平がもたらされ、社会不安や国際緊張の激化にもつながりかねず、当然是正する必要があります。
こうした問題は、個人間や組織間、そして地域間においても生じる可能性があります。たとえば個人間でも、後述の世代間格差にその典型をみるように、種々の便益格差として現れます。
また、ICT化に取り組んでいるものの、有効活用できていない組織も少なくありません。その結果、企業であれば競争優位性を失うことにもなります。この場合のデジタル・デバイドの主要な要因としては、
①トップのICTに関する認識が不足している
②ICTの導入目的が不明確である
③組織メンバーの情報リテラシーが不足している
などが考えられます。
さらに、地域という観点でも、「地域力」の向上を実現するためにはICT活用が重要となり、その巧拙がポイントとなります。
たとえばICTを有効活用することによって、地域内の関係者間(住民、自治体、各種団体など)のコミュニケーションがより円滑化します。その意味で、地域レベルでも、デジタル・デバイドは軽視できない問題となるのです。ちなみに、デジタル・デバイドを生む主な要因として、①収入(所得の差)、②人種・出生地(「南北問題」)、③教育レベル(学歴より、読む力、理解する力)、④家族構成(高学歴の親がいる家族)、⑤年齢(若い人と中高年の間)、⑥居住地域・地区(都会と地方)、⑦州・都道府県(「南北問題」)、⑧読み解く力(子供だけでなく大人も)、⑨語学力(特に英語力)があげられています((財)社会経済生産性本部)。
ところで、インターネットの効用を考える上での重要な視点として、いわゆる「ソーシャル・キャピタル」があります(社会関係資本:人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く(Wikipedia)。以下、SC)。既往の実態調査によると、インターネットの発達が共同作業の効率化や周辺からの参加の増加によって、社会的つながりをもたらすことが明らかです。また、インターネット利用者の大半が、インターネットが人間関係の改善に役立っており、より良い家庭関係、友情、恋愛につながると考えています。
しかし他方で、インターネットがSC形成という点からみて良好ではない面もあります。