日本の企業社会

ピーター・F・ドラッカー『マネジメント』

評判の、ドラッカー『マネジメント』に指摘されている企業のマネジメントとは。

最近、「マネジメントの巨匠」とも称されるピーター・F・ドラッカー関連の本が日本国内でベストセラーになっています。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』というタイトルの本で、しばしばマスコミも取り上げています。

本書は、ドラッカーの著作『マネジメント』のエッセンスを、ストーリー形式で学ぶことを意図したものです。

その内容は、新人女子マネジャーの川島みなみと弱小チームの野球部の仲間たちがドラッカーの『マネジメント』を読み、そこから野球部の改革、課題の克服に向けて取り組み、甲子園をめざすというサクセス・ストリーの青春小説です。

川島みなみは、たまたまドラッカーの『マネジメント』に出会い、甲子園をめざす野球部に「マーケティング」「目標管理」「イノベーション」などのドラッカーの考え方を適用していき、練習方法や部内の雰囲気を変えていきます。

こうした試みによって、ドラッカーが示唆する「われわれの事業は何か。何であるべきか」あるいは「顧客とは誰か」といった問いの答えが明らかになっていきます。

ともかく、本書では、川島みなみのさまざまな試みが、企業経営における重要なヒントにつながっていきます。

たとえば、「イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できる」というドラッカーのことばを参照した川島みなみと年下の女子マネジャーの北条文乃は、古いもの、死につつあるものとして、「送りバント」と「ボールを打たせる投球術」に着目し、これらを捨てる「ノーバンド・ノーボール作戦」を思いつきます。

そして、このことによって、打者も投手もやるべきことを絞り込むことが可能となり、ほかの練習に専念することができ、チームはめざましい成果を上げていきます。

本書では、このようにドラッカーの名言とストーリーが対(つい)となって話が進んでいき、ごく自然な形で組織に必要なマネジメントのポイントを学ぶことができます。

ちなみに、本書を読んだ感想がインターネット上ですでに多数見られます。そこでは、肯定的な見解のほうが否定的な見解よりも多いようですが、否定的な見解も決して少なくなく、二分しています。

前者では、「抜群な分かりやすさ」「いろいろな面で勉強になった」「常に『存在意義・顧客』に視点を置いて流れるように記載されている」「ドラッカーのマネジメントがどのようなものかを、恥をかかない程度に知っておくためには役立つ」といった意見があります。

一方、後者では、「まるで中学生が書いた作文のように文章が稚拙で、物語に入り込めない」「結局、企画モノの域を一歩も出ていない作品」「『マネジメントとは何か』を語るにしても、あまりに不十分」といった意見です。

そもそも、ドラッカーの『マネジメント』では、企業をはじめとするさまざまな組織が「社会や個人のニーズを満たすためにある」としたうえで、戦略計画の立て方やマネジャーの必要性、意思決定の手続きの重要性などの持論が展開されています。

企業では従来、社長の経営次第で企業の運命、社員の幸せが左右されてきました。すなわち、リーダーの才覚で成功するか否かが分かれたのです。

ドラッカーは、今後はそうではないと主張します。すなわち、社員の一人ひとりがみずからを律する必要があると主張します(『経営者の条件』)。

マネジメントについてドラッカーは、3つの役割をあげています(上田惇生)。

第1は、それぞれの組織に特有の社会的機能をまっとうすることであり、事業を通じて社会に貢献することです。
第2は、それぞれの組織にかかわりを持つ人たちが生き生きと生産的に働けるようにすることです。
第3は、世の中に悪い影響を与えないことであり、みずからの存在と活動のゆえに世の中に与えるインパクトをなくすことです。

このように見てくると、今の世の中がドラッカーが考えた理想の姿とは依然かけ離れた状態になっていることが改めて明らかであり、その意味で、企業社会の改革が強く求められています。

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