特集

経済 我らがBC州  ―世界不況の中でのブリティッシュ・コロンビア州

リーマンショックで始まった世界大不況の中で、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の状況と、今後の展望は?

1930年代の大恐慌よりもひどくなりつつあると言われるほどの今回の不況でも、カナダは他の先進諸国に比べて症状が軽いといわれています。それでも、貿易相手国の経済の悪化による影響はまぬがれず、2009年も引き続き厳しい状況が続くと予想されています。3月には、IMFの視察団がカナダを訪れて経済状況を調査した報告を発表しました。

これまでのBC州

カナダの中でもBC州は2008年まで、減税やゲートウェイ戦略などの積極的な経済政策を行い、かなり健全な経済状態にありました。

具体的には
① 減税の実施。
② ゲート・ウェイ戦略によるアジア市場との連帯の強化。
     輸送インフラの整備等。
③ 先端技術の分野への支援。
    ・薬品等、ライフサイエンス
    ・IT産業などのニューメディア支援
    ・クリーンエネルギー
④ 大学への研究開発援助。企業家の育成支援。
⑤ 貿易・投資の自由化推進
         カナダの州同士の壁を取り払い、人材や物、資金等が自由に行き来できる経済圏を作る。
        (TILMA:アルバータ、サスカチワン)
⑥ アボリジナルに対する経済の支援。

押し寄せる不況の波への対応策

それでも世界不況の波はここにも例外なく押し寄せています。
それに対応して、2008年10月以降、BC州ではいくつかの対応策を講じました。
① 総額約5億ドルの景気対策(主なもの)
     ・中小企業の法人税引き下げ(3.5%→2.5%)
    ・公共インフラ事業の加速化
    ・州内のフェリー料金の引き下げ
② 向こう2年間の赤字予算を編成
    法律では均衡予算(赤字にならないように予算を組むこと)が義務付けられている。
それに従い、2002年以降は黒字を 続けてきたが、
今回の予算では赤字を見込んだ支出超過予算をたてた。
        (2009年:4.95億ドル、2010年:2.45億ドル)
    ・向こう3年間で140億ドルをインフラ整備につぎ込む。
    これにより⇒ 88,000人の雇用を生み出す。
    ・向こう3年間で39億ドルを医療福祉に配分したものに加え、9.2億ドルを追加。

2009年、2010年の予算

歳入    388億ドル

歳出    393億ドル

・税収                  185億ドル
・税収                  185億ドル
・連邦交付金       64億ドル
・資源ロイヤルティー  36億ドル
・公営事業          28億ドル
・その他             75億ドル

・医療福祉         157億ドル
・教育               108億ドル
・公共サービス      34億ドル
・資源、経済開発   18億ドル
・警察、法務等      15億ドル
・負債償還           22億ドル
・その他              38億ドル

今回の経済危機は、カナダBC州の輸出産業にとって大きな影響を与えました。
◆ 海外の需要の減少
◆ 石油資源などの商品価格が下落
◆ 木材輸出の減少(2004年からの輸出額は50%減)
◆ 内需の悪化
2002年以来、建設投資、個人消費、資源再開発などで記録的な経済成長を
続けてきたBC州ですが、今回の世界経済不況の影響でこれらが急激に減少しました。
2009年中は、この減少傾向が続くと見られています。
    ・住宅建築ブームがピークから15%下落。
    ・小売業は対前年比で約6%の減少。
    ・家や車、家電製品などの高額商品の買い控え。
    ・失業率が6.1%までに悪化(2009年1月)

経済成長率の見通し
(日米欧はIMF,カナダは連邦政府予算、BC州は州政府予算)

 

2008年

2009年

2010年

米国

1.1%

-2.8%

-0.0%

EU圏

1.0%

-4.2%

-0.1%

日本

0.3%

-6.2%

0.5%

カナダ

0.7%

-0.8%

2.4%

カナダ

1.0%

-0.9%

2.4%

 

こうした中での成長の模索

BC州政府は、Paific Gateway 戦略を推進しています。

・アジア市場が急成長をしている。
・北米でアジアに最も近いため地理的に有利。
・アジア系移民の多さによる強い絆。

目標
1.北米のゲートウェイとしてのアイデンティティの確立。
2.アジア太平洋貿易・投資の促進、強化。
3.国際級のインフラとサプライチェーンの構築。
4.技術者・労働者の養成。
5.ツーリズム、文化交流、教育の活発化。

具体的には
港湾、空港、鉄道、道路への設備投資。
① アジアとの輸送ルートを確立する。
    バンクーバー港の整備と取り扱い許容量の拡大
    プリンス・ルパート港の整備2007年の開港時のコンテナ取り扱い量50万TEUを、2012年までに200万TEUに拡張する。

2020年目標
BC全体でのコンテナ取扱総量=900万TEU(05年200万TEU)
バンクーバー国際空港利用者数=2840万人(2005年1640万人)
空港貨物=44万トン(2005年22万トン)

プリンス・ルパート港:
北米でアジアに最も近い港。アジアまでロサンゼルス・ロングビーチより48時間短縮でき、シカゴまでCN鉄道で107時間でいける。

② 輸送道路・鉄道の整備
    ・ポートマン・ブリッジの拡幅工事。
    ・ハイウェイNo.1(Vancouver-Langley)の改良
    ・デルタポート・ウェイの延長   
    ・ピットリバー・ブリッジの新設
        (New Westminster-Maple Ridge間の改良)
    ・CN鉄道をコンテナ2段積み用に増強。

BC stats/ 資料:BC stats 他BC州政府資料による。

カナダの2008年第四半期のGDP(国内総生産)成長率はマイナス3.4%。輸出や住宅投資など、ほぼ全般にマイナス。(アメリカはマイナス6.2%)

世界的大不況の中にあるカナダ

2008年のクリスマス商戦は、ほとんど全ての商品で売り上げが激減した(前月比が5.4%)。過去15年間で最大の落ち込みだといわれます。
09年は世界的な不況の影響で、商品価格の急落、米経済の先行きの不透明さなどで、さららなる景気後退を余儀なくされると見られています。

リーマン・ブラザースの破綻によるBC州への影響
米国のリーマン・ブラザースは、BC州の建設プロジェクトに資金を提供していましたが、この会社の破綻と同時にサレーの5棟のコンドミニアム建設が一時停止を余儀なくされました。資金調達は今後しばらくはますます困難になるだろうと見られています。

資源探査会社の資金調達
BC州には資源探査会社が多くありますが、これらの資金調達も困難になると見られており、円高のおりから、調達先を日系企業へと求める傾向もあります。

木材業も苦境に
また、米国内の住宅バブルの崩壊による輸出減少と木材価格の下落で、BC州の製材業に深刻な影響を与えています。資源価格の急落によってカナダドル安になったものの、米国への輸出の落ち込みをカバーできるほどには至らず、木材業は苦境に立たされています。

一方で2009年は消費が向上すると言う人もいます。その根拠は―
◎例年の財政黒字を基に、法人税・個人税の大幅減税の推進。
    今後5年間で約200億ドルの所得税減税
    雇用保険料の低額維持
◎消費意識の向上。
    消費者信頼感指数が61.0から67.0に向上
            (調査会社ハリス・デジマの調査による)

カナダは、世界大不況の中にあって、比較的症状が軽い国です。
必要以上に神経質にならず、よく現状を見ながら普通の消費生活を送ることが大事でしょう。

カナダの2009年度予算における経済刺激策

■インフラ構築: 約120億ドル
全国の道路、橋、ブロードバンド・インターネット接続、医療電子記録、研究所、国境検問所整備など。⇒ 経済成長と雇用を支え、長期的な生産力を高める。

■減税および雇用保険料の低率維持: 200億ドル
2008-09年度以降5年間、個人所得税の減税を行い、雇用保険料も低率を維持する。

■住宅改築への支援: 78億ドル
高品質住宅の建設、省エネ推進を図る。およそ460万世帯に最高1350ドルの改築税額控除、省エネ改築への資金援助、低所得者・高齢者・障害を持つ人・先住民を支援するための社会福祉住宅投資、地方自治体への低金利融資などを行う。

■金融システムの強化: 臨時融資2000億ドル
消費者の資金調達を円滑化し、企業の投資・成長・雇用創出に必要な資金調達を支援。

■国民への支援策: 83億ドル
「カナダ技能訓練・転職支援計画」を実施。=不況で最も損害を受けた国民への追加支援。

■企業と地域社会への支援策: 75億ドルの追加支援
雇用を保護し、産業の部門ごとに調整を支援する。自動車・林業・製造業に的を絞った支援、またクリーンエネルギーへの資金援助。

カナダが熱望する外国からの投資

外国からの投資は、税収や雇用の創出など、多くの利益をもたらします。
投資をする側にも利益の多いカナダ
◎ 先進国の中では事業コストが安い。
◎ 研究開発コストが安い上に、研究開発環境が整っている。
◎ 北米自由貿易協定(NAFTA)調印国であり、北米市場へ参入し易い。
◎ 国際規約に準拠しており、安全で確実に営業活動ができる。
◎ 連邦・州政府共に積極的に投資環境を改善し、国際技術協力・提携の促進をはかっている。

アメリカに始まった大不況の原因は?

不況不況といわれるけれど、いったいどうしてこんなことになったの?
普段馴染みのない言葉が飛び交っていて、よくわからない。
そこで、ここに超簡単な図式を作ってみました。

▼サブプライムって何?
お金を貸りても返せる能力があるという信頼のある人が"プライム"。
それに対して、返す能力が低い人たちのことを"サブプライム"という。
▼サブプライムと呼ばれる条件
・ 過去1年間に30日間以上のローン返済延滞が2件以上、または過去2年間以内に60日以上の延滞が1件以上ある。
・ 過去2年間に法定判決、抵当物件の差押え、担保回収、ローンの不払いがある
・  過去5年間に自己破産したことがある。
・  信用調査機関のリスクスコアが所定の値を下回る。
▼サブプライム層にお金を貸す条件は
・ 収入証明を必要としない。
・ 仕事を持っているか、資産を持っているかを問わない。
▼ローンの利子は?
信用性が低いので非常に高い金利でお金を貸す。

返してもらえない危険性が高いのになぜ貸したか。

=買った住宅そのものを担保にした。
=ローンが払えなければ取り上げて売れば利益が出るから。
        (米国の住宅価格はずっと上がり続けていた。)
つまり
◆ローン会社がサブプライム層に高金利でお金を貸す。⇒ ◆借り手は、金利が高すぎてモゲージが払えなくなる。⇒ ◆ローン会社は家を取り上げて売り、利益を得る。(借り手は借金がなくなるが、家もなくなる。) ⇒ ◆ローン会社はまたサブプライム層にお金を貸す ⇒ ◆繰り返し・・・・・

この方法なら、景気が良い間は不動産価格がどんどん上がるので、貸し手はどんどん儲かる。同時に、高利子だからローン会社は貸せば貸すほど儲かるので、より信用性の低い人に無条件でお金を貸すようになる。

第二段階 サブプライムローンの債券化
これらのサブプライムローンを債券にして売買できるようにした。
    =不動産価格が上がっている間は高い利回りで儲かる。
    ↓
どんどん儲けようとお金を貸す規準を甘くしたために、ローンを返済できない借り手が大量に出る。
    ↓
担保にしていた家を取り上げて売る。
    ↓
大量の売家が出回る。
    ↓
需要より供給が多くなり、家の価格が安くなる。
    ↓
サブプライムローンの債券で運用していたヘッジファンド(投機的に運用して高利潤を得るファンド)が破綻する。
    ↓
銀行や投資家が資金の回収を始める。
    ↓
サブプライムローンの債券を持つファンドの信用性が無くなる。
    ↓
みんなが持っていた株を売りたがる。
    ↓
株安になる。

一方で
銀行が異常に慎重になり、条件を厳しくしすぎる。本来貸してもいいようなところにも貸さなくなる。
    ↓
お金を借りることができなくなり、会社や消費者の活動が鈍くなる。
    ↓
社会全体が停滞しはじめる。
    ↓
不安で皆がお金を使わないようになる。
    ↓
商品やサービスが売れなくなる。
    ↓
会社は社員に給料を払えずに、倒産したりリストラしたりする。
    ↓
ますますお金が使えなくなる。
    ↓
商品やサービスが売れなくなり、悪循環・・・

リーマン・ショックによる
世界同時株安
リーマンブラザース:不動産の証券化業務を行っていたが、住宅バブルの崩壊により赤字に転落。
    ↓
ニューヨーク株式市場が7年ぶりの大幅下落。
    ↓
アメリカで、住宅ローン担保証券の格下げ。
    ↓
フランスの大手銀行でもファンドを一部凍結。
    ↓
世界中の株式市場が大混乱で世界同時株安となる。

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